【ロジックモデルの急所】アウトカムとアウトプットの違いとは?
ロジックモデルを作る際に、頭を使わないといけないのはアウトプットとアウトカムを考えるときではないでしょうか。ロジックモデル以外でも、ビジネス上の成果の設定や事業のマネジメントなんかでもよく使われるものだと思います。今回は、アウトプットとアウトカムの違いにフォーカスして解説していきます。
目次
ロジックモデルとは?を再確認
ロジックモデルとは、「現在行っている事業がどのように受益者(利益を受ける人たち)の生活の向上といった成果につながっているのかを可視化したもの」です。行政では政策評価などで用いられてきましたが、近年民間の非営利組織の成果評価でも使われるようになってきました。
ロジックモデルを使えば、どの成果指標を使えばいいのか、プログラムの効率性はいかほどかなどといったことを比較的考えやすくなります。内閣府も最近では普及を進めるようになっています。
アウトプット/Output
アウトプットには、「生産物」という意味があります。ロジックモデルの場合、活動の結果として自分たちが直接的に作り出したものと考えることができます。
アウトプットの3つの特徴
アウトプットの特徴は、以下の3点であると言えます。
- 自分たちが中心である
- コントロールできる
- アウトプットの分析や評価は事業やプログラムの効率性を明確にする
まず「自分たちが中心」や「コントロールできる」については、自分たちが直接的に作り出すものなので当然と言えます。最後の「効率性の分析や評価」については少し注意が必要です。あくまで事業やプログラムの効率性の分析・評価であり、成果の分析・評価ではありません。よくある失敗談として一生懸命分析や評価をしているのがアウトプットのレベルであり、その先のアウトカムでなかったというものがあります。
《Output》を語源からみてみると…
アウトプットの英語の綴りをよく見てみると「out+put」ですね。語源を辿ってみると、「out」は枠の外側に出るという意味合いがあり、「put」はあるべきところに位置させるという意味合いがあります。この二つを合わせると、「枠の外に出して外部に位置させている(置いている)」イメージですね。
このイメージから、アウトプットには生産物といった意味があるのだと考えられます。この場合、話題の中心は自分たちにあります。
アウトカム/Outcome
アウトカムは「成果」という意味合いがあり、ロジックモデルの場合、対象としている受益者の生活や行動がどう変化したのかを表しています。
アウトカムの3つの特徴
アウトカムの特徴は、以下の3点にまとめられます。
- 受益者が中心である
- 基本的にコントロールはできない
- アウトカムの分析・評価は事業やプログラムの成果を明確にする
アウトカムは受益者の生活や行動がどう変化したかを表しています。そのため当然中心は受益者です。また、特に時間が経てば経つほど、アウトカムをコントロールすることは難しくなります。
最近、ソーシャルセクターやCSR(企業の社会的責任)界隈で話題の社会的インパクト評価では、アウトカム指標を設定します。内閣府の発表している資料では、社会的インパクトの定義自体が「短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の成果として生じたアウトカム」となっており、アウトカム重視なことが見て取れます。
《Outcome》を語源からみてみると…
outについてはoutputの時と同じです。枠の外側への動きを意味しています。「come」については、よくある日本語訳の「来る」とは少し違います。「come」は、「話題の中心になっている人の方へ行く」という意味合いがあります。海外の映画で誰かに呼ばれた時に「I’m coming」と返事をしているシーンを見かけますが、これは話題の中心・視点が相手にあるのでcomeを使っているんですね。
少し脱線しましたが、アウトカムの場合、「自分と相手がいる場合、自分の方から相手の方に行く(相手からみると来ている)」という意味合いがあります。そして、話題の中心は相手にあります。
アウトプットとアウトカムの違いが分からなくなったら
では、アウトプットとアウトカムの違いが分からなくなったらどうすればいいでしょうか?
話題の中心は誰か?を考える
ズバリ「主語が何か」を考えるということです。もう少し言うと、「話題の中心が自分たちか受益者か」を考えるということになります。
すでに書いてある通り、ロジックモデルでは、アウトプットは「(自分たちの)生産したもの」、アウトカムは「(受益者に)及ぼされたもの」です。
例えば、セミナーへの参加人数や集めた寄付金の金額は、自分たちが行なったことによる結果です。自分たちが集めた人や寄付がいくらかということを表しています。逆に、アウトカムはセミナーに参加した人の起業率や社会復帰した人たちのQoLであったりします。これは、主語が明らかに受益者になっていますね。起業するのはイベントに参加した人であり、QoLは社会復帰をした人のものです。このように、自分たちが中心か、相手が中心かによってアウトプットやアウトカムを考えてみると少しは分かりやすくなるのではないでしょうか?
因果関係を考える
因果関係を考えてみると分かりやすくなる場合があります。アウトカムはアウトプットがあるからこそ成り立つものです。
【アウトプット】→が故に→【アウトカム】
この構図を元に考えてみましょう。この因果関係を考えることはロジックモデルの核心になるものなので、考えてみる価値のあるものでしょう。
まとめ
今回は、ロジックモデルのアウトプットとアウトカムの違いにフォーカスして解説しました。アウトプットとアウトカムの違いを考えるだけでも事業の質を上げることができるような気もします。
とは言え、事業やプログラムの実施において重要なことは、アウトプット(結果)ではなくアウトカム(成果)を意識することです。対象としている受益者へどのくらい影響を与えたのかを常に自分たちに問いかけ続けることが必要でしょう。
参考文献
[1]W.K, Kellogg Foundation(2004)”Logic Model Development Guide”
[2]G8社会的インパクト投資タスクフォース国内諮問委員会(2015)『社会的インパクト投資の拡大に向けた提言書』
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