システム思考で社会課題が分析できる!
社会課題は複雑(Complex)なものです。頭の中だけで考えていてはなかなかその構造についてすべてを理解することは困難でしょう。このとき力になってくれる思考法がシステム思考です。今回はシステム思考の概要とよく使われるツールについて紹介します。「社会的インパクト評価で使われる主なツール3選」でも詳しく解説しています。
システム思考とは?
システム思考とは一言で言うと、要素の繋がりから全体の構造や様子をみる思考法のことを指します。複雑な現象は要素が多いだけでなく、それらがいろいろな形で繋がりあって起こっています。社会課題もその一つです。適切なアプローチをとるためには、適切な構造分析とその理解が必要で、システム思考はこれを助けてくれる思考法です。
システム思考が効果的なシチュエーション
システム思考が効果を発揮するシチュエーションとして、新規事業を開発するときや社会的インパクト評価を行うときが挙げられるでしょう。
新規事業開発の場合は、対象とする受益者のおかれている状況を構造的に理解し何にアプローチしたらいいのかを考えることができます。
社会的インパクト評価の場合、自分達の組織の社会的インパクトを定義しどのように繋がっているのかを明確にするとき役立ちます。他にもロジックモデルやセオリーオブチェンジといったフレームワークがありますが、これらのフレームワークの肉付けに効果的です。
ツール
システム思考を活用する上で、様々なツールが活用されます。ここでは、枝廣淳子氏と小田理一郎氏の『「システム思考」教本』を参考にいくつかツールを紹介します。
氷山モデル
氷山モデルは、ものごとや出来事の奥にある因果律を視覚化したものです。氷山モデルは以下のようなモデルです。
出来事
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パターン
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構造
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メンタルモデル
社会課題を考える時、このモデルの威力がよくわかります。例えば、低い識字率という社会課題を考えてみましょう。「出来事」としては、読み書きができる人が少ないといったことが当てはまります。「パターン」として、教育を満足に受けることができないというものが該当します。このようなパターンを生み出す「構造」は、義務教育制度が整っていないとか、過度な児童労働などが挙げられるでしょう。そして、「メンタルモデル」には、そもそも文字を読める必要がないという意識とか読み書きできない方が扱いやすいといった雇用主の意識が該当するでしょう。
このように、表面的に見えている社会課題も「出来事」「パターン」「構造」「メンタルモデル」と階層に分けて考えることでより深い検討が可能になります。また、基本的に深い階層にアプローチすることで、より根本的な問題の解決が可能になります。
時系列変化パターングラフ
これは、時間の変化と出来事にいたるまでの変化を合わせて考えることで要素間の繋がりが時間の経過によってどのように変化しているのかを知るツールです。
このモデルでは、傾向やパターンが浮き彫りになるので、出来事への対策をタイミングに合わせて実施できます。例でいえば、平均寿命が時代を追って伸びれば伸びるほど、老老介護が増えるとか、介護疲れによる殺人が増えるといったような例が考えられます。あらゆる変数を並べてみることで、今まで見えなかったパターンが見えてくるかもしれません。
ループ図

ループ図は、たくさんある要素を因果関係で結んでいくものです。上の例では、「+」は正の因果関係を指しています。一方が増えれ(減れ)ば片方が増える(減る)といった関係です。「−」は、一方が増えれ(減れ)ば片方が減る(増える)といった負の因果関係を指しています。
複数の要素が複数の要素の原因や結果となっていることを明確にし、見える形にするところに大きな意義があります。また、ループ図は作る人によって変わってくることがほとんどです。因果関係やシステム全体の捉え方に個人差が生じているからです。ですので、複数人で持ち寄った上で、どこがどのように違うのか、なぜ違うのかといった点を話し合うことが重要であると言えます。このような意味で、最適な解決策としてどのようなものがいいのかを考える際に役に立つでしょう。
推論のはしご
これは無意識のうちに持っている前提がどのように出来上がっているのかを考えるためのツールです。私たちは皆知らず知らずのうちに「こうである」という前提を持って生きています。このこと自体悪いことではないのですが、これらの前提の上で行動や思考が行われていると意識しなくては深い次元で物事を考えることはできません。
推論のはしごでは、主に以下のような構成になっています。
「観察できるデータや事実」
↓
「事実を選び出す」
↓
「個人的な解釈による意味づけ」
↓
「推測」
↓
「結論」
↓
「行動」
このツールにおけるポイントは、何かの行動の背後では推測や解釈が行われており、同じ事実を見ていたとしても、それは変わってくるという点にあります。ですので、受益者である人たちの行動がなぜ行われているのかを分析する際に、役に立つツールだと言えるのではないでしょうか?
まとめ
社会は巨大なシステムであると考えると、そこに存在する社会課題もシステムの結果として生み出されているものと言えます。社会課題の構造を理解するためにもシステム思考は非常に強力な思考法ではないでしょうか。
ロジックモデルやセオリーオブチェンジ等のようなフレームワークとも組み合わせて活用することでより効果的に使えると思います。
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