社会サービスの可能性をテクノロジーが拓く!

2017-06-29

社会サービスは私たちの生活になくてはならないものです。しかし、様々な環境の変化によってそれ自体のありようも変わっていかざるを得なくなってきました。特に、テクノロジーの進歩と足並みを揃える形で、相乗効果を発揮して社会的価値を作り出す例も見られるようになりっています。今回は、テクノロジーが社会サービスの可能性を拓いていく様子を紹介したいと思います。

社会サービスについて

社会サービスは、生活の基盤を支え安心・安全な生活をするために必要なものです。例えば、医療サービス、介護サービス、住宅供給、生活環境サービスなどが挙げられます。

これらのサービスは、これまで主に政府や行政によって提供されてきましたが、財政難などの理由によって、社会的ニーズに応えきれなくなり、社会福祉が実現できない危険性が出てきました。そんな中で、民間の主体による社会サービスの提供を充実させることに注目が集まるようになり、政府や行政を補うだけでなく、よりクリエイティブに実施していくことに期待が寄せられています。

ただ、歴史を見ると、政府や行政が提供するよりも前に、民間の人々が互いに助け合うための取り組みの方が先にありました。例えば、保険という仕組みもそこで生まれたものです。戦後、社会保障制度の整備が進んでいく中で、このような仕組みが制度化され、国民統合の手段として導入されたのです。このように考えると、特別なことではなく、歴史の流れの中で必然と言えるのではないでしょうか。

そんな中、民間主体がクリエイティブに社会サービスを提供するようになることで、テクノロジーの利活用も急激に進んできました。以下では、「社会サービス自体を発展させる」ものと「社会サービスを支える」ものの2つに分けて、どのような活用がされ社会的価値を作り出しているのかを紹介します。

社会サービス自体を発展させるテクノロジー

技術の進歩によって、社会サービスで実現できることが多くなりました。その中でも、あくまで一例ですが紹介します。当たり前のように見えても、技術の果たす役割はかなりのものがあるといえます。

交通アクセスを簡単に

最近話題になっているカーシェアリングは交通アクセスが困難な人たちにとって便利なサービスになりつつあります。カーシェアリングを支えている技術といえば、インターネットやスマートフォンなどが挙げられますが、多くの人たちがこれらの技術を使えるようになったからこそ実現できるサービスといえます。

また、熾烈な開発競争の進んでいる自動運転技術も将来的に大きなインパクトを生み出すと考えられます。過疎地の買い物難民や高齢者による交通事故などの問題を解決できる技術になっていくのではないでしょうか。

環境面を考えると、電気自動車は排気ガスを排出しないことからも期待が寄せられています。インターネットや自動運転などの技術と相性がいいので、急速な進展が期待できます。

災害のモニタリング

途上国と呼ばれる国では、日本のように天気予報が正確ではありません。また、日本でも自然災害が大規模化しています。このような状況から、自然や災害の正確なモニタリングが求められるようになっています。そこで活用が進んでいる技術として、IoT(モノのインターネット)というものがあります。「IoTが社会的インパクトを加速させる」でも解説していますが、低コストで雨量や地面の状態、電力の状態などをモニタリングできるので各方面での普及が期待できます。

また、宇宙技術の進展もいい影響を与えるでしょう。現在、世界中のベンチャー企業が宇宙へ打ち上げるロケットの開発を進めていたり、宇宙空間を活用した技術を開発していたりしています。日本の正確な天気予報が人工衛星によるものということを考えてみると、今後あらゆる分野で衛星やそのデータを活用したサービスが実現するでしょう。そうすれば、大規模な災害を予報したり、避けられる災害を避けることもできるようになると思われます。

教育機会を平等に

教育機会の平等は未来の社会を考える上で不可欠なことです。教育を受けられない原因として経済的な面以外にも近くに学校がないといったような物理的な側面も挙げられます。それらを解決するために、Moocs(Massive Open Online Courses)といったサービスがあります。これは、ビデオ通話やインターネットを活用することで遠隔地でも教育を受けることができるものです。優秀な人材を見つけ出し、機会を与えることで将来の社会を支える人材を排出することができるのです。このように考えば、伝統的な教育のあり方や意味合いが技術によって問い直されるのではないでしょうか?

僻地医療への応用

医療を受けるためには近くに病院があることが重要です。急を要する事態の時に遠くまで連れていくことは非常にリスクが高いからです。そういった意味で、過疎地や中山間の僻地での医療サービスの提供を実現する技術はとても重要であるといえます。ビデオ通話やインターネット、カルテの電子化などは、僻地医療を充実させる上で重要な技術であるといえます。遠隔操作で手術ができる技術も生まれており、医療人材の密度の格差を埋められると期待がされています。

クリーンエネルギー

環境破壊が進んでいると言われている中、太陽光や風力などといったクリーンエネルギーの活用は重要です。再生可能エネルギーとも言われるこれらのエネルギーは、様々な企業や研究機関によって開発が進んでおり、政策にも積極的に取り入れられています。

自然環境は、我々人類が生きていくためになくてはならないものであり、破壊し尽くしてしまうと取り返しがつきません。環境を守ることは自分たちを守ることにつながるのです。

金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)

全ての人たちに金融サービスへのアクセスを提供しようとする考え方を金融包摂と言います。これまで、銀行や証券会社などといった特定のプレイヤーによって提供されており、ガチガチの規制の下で運営されていたので、排除された人たちはなかなか恩恵に預かることができませんでした。そんな中、金融とテクノロジーを融合させたFinTech(フィンテック)が注目を集めています。

また、フィンテックの基盤技術でもあるブロックチェーンという技術は破壊的技術として脚光を浴びています。高いセキュリティを実現でき、運用コストを削減できることから、フィンテック以外の分野への応用も期待されています。これにより、高いコスト故に何らかのサービスにアクセスできなかった人々へサービスを提供することも可能になると考えられています。

社会サービスを支えるテクノロジー

主にバックオフィス(表に出ない)分野ですが、テクノロジーが可能にしているところは多くあります。あくまで一例ですが、紹介します。

ファンドレイジング

ファンドレイジング(資金調達)といえば、これまで寄付を募るために街頭へ立ったり、支援者を直接訪問したりといった方法が一般的でした。もちろん、これからもこのようなやり方は必要ですが、テクノロジーを応用することで新しいやり方も生まれています。

例えば、クラウドファンディングが挙げられるでしょう。これは、ネット上で不特定多数の人々から小口の資金を集めて、プロジェクトを実施しようとするものです。身の回りに賛同してくれる人が少なくても、ネットを介して多くの人に発信することで実現できるかもしれません。

また、ビッグデータを活用してより効果的に資金調達しようとする取り組みも現れました。寄付したい人々の満足度を高めつつ、より多くの寄付を集めるためにために、ソーシャルメディアでの発信をはじめ様々なデータを活用し、最適なタイミングで最適な方法を提示しようとしています。

社会的インパクト評価

社会的インパクト評価は、ある事業がどの程度の成果をあげているのかを評価するものですが、このためには一定程度のデータサイエンスの知識が必要になります。つまり、どのように成果を定義して、どのデータをどのように集めて評価をするのかという点を考えることが必要です。

また、将来的には、IoT(モノのインターネット)を活用して、何らかのデータを収集したりモニタリングしたりといったことが行われるようになると思われます。高齢者の健康状態や自然災害のモニタリングなどを継続的にチェックすることで、どの程度改善できているのかを把握できるからです。

ソーシャルマーケティング

社会的な関わりに重点を置くソーシャルマーケティングに関してもテクノロジーの活用が進んでいます。ソーシャルメディア(SNS)を生かして受発信を行ったり、ビッグデータを活用してコミュニケーションを行なっています。

コミュニケーションの方法がテクノロジーによって多様化することによって、より相互作用を重視するやりとりが可能になってきました。一方的な発信ではなく、相互作用を伴うコミュニケーションはソーシャルセクターのみならず、企業においても重要なことでしょう。

身体的な負担の軽減

社会サービスの現場は人が実際に活動することが多いものです。例えば、介護の現場では、ベッドからの移動や入浴の介助など肉体的な負担がかかることも少なくありません。これは介護に限った話ではなく、災害現場やその他の現場でも言える話です。

今後、体への負担を減らすために、ロボットスーツが導入されることも増えていくでしょう。体への負担が少なくなれば、その仕事をする際の障壁も低くなります。

技術革新で限界を超えていく

私たちの世界は技術の進歩によって圧倒的に便利な世界になっています。「イノベーション」という言葉が象徴するように、新しい技術や取り組み、アイデアの必要性は、より豊かな世界を実現するために高まっています。テクノロジーの進歩によって、これまでの限界を超えていくことが、より豊かな生活を実現することにつながるでしょう。

しかし一方で、これまで考える必要のなかった様々な問題も同時に生まれてくるということも忘れてはいけません。倫理的に大丈夫なのか?プライバシーは?法制度をどうするのか?など…。新たな社会サービスがすぐに浸透しないのと同じように、技術もすぐには浸透しません。焦らずにかつ積極的に取り組みを進めていく必要があると思います。

まとめ

今回は、社会サービスにテクノロジーがどのように貢献しているのかを紹介しました。

ところで、テクノロジーの語源はギリシャ語の「テクネー(技)」にあるとされています。人類が一番はじめに手にしたテクノロジーは「石器」でした。そこから何万年もかけて人類は豊かに便利になるための「技」をひたすらに磨いてきました。しかし、「技」それ自体は手段であり目的ではありません。これまでもこれからも磨いていくその「技」を、どのように人類に、社会サービスに活かしていくのか、そこにこそ人類の知恵が求められているのではないでしょうか?

参考文献

[1]伊藤淑子(2001)『現代日本の社会サービス』
[2]大野吉輝(1991)『社会サービスの経済学』
[3]ビットバンク(株)&『ブロックチェーンの衝撃』出版委員会(2016)『ブロックチェーンの衝撃』
[4]Tech meets Good | 科学技術とSocial Goodの幸せな出会い