日本でコレクティブインパクトはどれだけ馴染むのだろうか?

コレクティブインパクトが提唱されてから世界中でその実践が始まりました。日本もその例外ではなく、色々な立場の人たちが議論や実践を始めています。ところで、コレクティブインパクトというアプローチは日本でどのくらい効果を発揮するのでしょうか?日本のこれまでの歴史も踏まえて、コレクティブインパクトが日本でどのくらい機能するか、その可能性を見ていきましょう。

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日本の文化や制度は欧米のそれとは違う

日本と欧米では、歩んできた歴史が違うため、同じように語ることは基本的にできません。そのため欧米でうまくいっているからと言って、日本でうまくいくとは限りません。これは多くの分野で言えることですが、コレクティブインパクトアプローチについても同じことが言えます。

コレクティブインパクトは、欧米で盛んに議論されており、実践も急速に増えてきているようです。もちろん日本でも議論や試行錯誤が始まっていますが、欧米が取り組んでいることと日本が取り組んでいることは、歴史や文化、制度の違いからも異なる発展を見せていくと考えた方が良さそうです。

コレクティブインパクトは日本と相性がいいかもしれない

欧米と日本では違うとはいうものの、そもそもコレクティブインパクトアプローチは日本と相性はいいのでしょうか?すでに制度化されている仕組みや歴史を見てみると日本とコレクティブインパクトは相性がいいのではないかと考えられます。

介護保険

介護保険制度は、2000年から始まった社会保障制度で、国民全体で高齢者を支えようとする仕組みです。40歳以上の国民全てが加入し保険金を支払うことになっています。

このサイトでも何度も繰り返していますが、現在の日本では高齢化が進み、介護や医療の負荷が非常に大きくなっています。また、ライフスタイルの変化によって、家族による介護という形も徐々に変容してきました。そのような状況の下で、政府や行政からのケアだけでなく、政府・行政を含む多様な主体で高齢者の生活を支えられる制度に改革されました。実際、多くのソーシャルセクター組織が介護保険制度を活用して、介護サービスを提供しています。

介護保険制度の大きな特徴は、高齢者自身が好きなサービスを選ぶことができる点です。介護についてはそれまで、行政によるやむを得ない措置として行われていましたが、高齢者の割合の増加や尊厳の尊重という点を考慮して大きな制度変更が実施されたのです。

介護保険制度に関わる主体の多様さ

すでに書いているように介護保険制度は、社会全体で高齢者を支える仕組みを目指して策定されたものでした。そのため、非常に多くの主体が連携して介護サービスの提供を行うことになっています。高齢者のQoL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上するために多様な主体が連携して介護サービスを提供しているという点では、コレクティブインパクトと近い部分があると思われます。

しかし、まだまだ各プレイヤーの質や連携の質などに関しては改善の余地があり、この点については、コレクティブインパクトの知見を積極的に参考にしてみるのも一つの手かもしれません。

休眠預金

休眠預金は一定期間以上預け入れも引き出しもされていない預金のことをいい、毎年数百億から1000億円程度発生しているそうです。2016年には、休眠預金活用法案が可決され、随時本格的な制度運営が始まっています。

休眠預金はもともと国民1人ひとりの財産が元になっているので、休眠預金自体も国民みんなのために使うべきだという考え方がベースになっています。そのため休眠預金の活用分野についても、以下のように、子供、生活困窮者、地域活性化の主に3分野が挙げられています

  • 子供及び若者の支援に係る事業
  • 日常生活または社会生活を営む上での困難を有する者の支援に係る事業
  • 地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援に係る事業
  • これらに準ずるものとして内閣府令で定める事業

コレクティブインパクトへのポテンシャル

休眠預金活用法案では、事業の成果を評価する社会的インパクト評価が重視されています。これは、休眠預金が成果を生み出すために活用されるようにという考え方からです。コレクティブインパクトの5つの必要条件の一つに「社会的インパクト評価の共有」という点が挙げられていますが、成果を基にする連携するという方向性も可能になるのではないかと期待できます。

日本社会の動き

すでに見たように日本では比較的官民一体の取り組みが多いと感じます。これは、日本が歴史的にも政府や行政がイニシアチブをとり様々な社会福祉に向けた取り組みを行ってきたことからも垣間見えます。コレクティブインパクトには多様な主体が高度に連携することが求められているので、政府や行政と組んだ実績が多いというのはアドバンテージであると言えます。

しかし、課題がないわけではありません。
日本では、今まで以上に社会的ニーズが多様化し、よりきめ細かい対応が必要になってくると考えられます。このような対応ができるのはやはり民間主体の方が得意な領域になってきます。そのため、コレクティブインパクトには、自ずと民間の足腰を強くしていくことが必要となりそうです。

コレクティブインパクトが日本で浸透するためには?

コレクティブインパクトで重要なことは色々な主体の連携とともに、対象とする受益者に必要な支援が有機的に連携し、仕組みを作っていく点にあります。コレクティブインパクトを提唱したマーククラマーらは5つの必要条件としてまとめています。そして日本において最も弱い部分は、「評価の共有」の部分だと言えます。受益者に関する様々なデータや体感をパートナーになる団体間で共有して、全体としてその構成を検討していくことが重要です。

まとめ

今回はコレクティブインパクトが日本でどのくらい通用するのかについて解説しました。欧米と日本では文化的にも制度的にも異なる点が多いので、一緒くたにして語ることは基本できませんが、日本の動きを見てみると思ったよりも相性がいいのではないかと思えてきます。

とは言え、今後どのような実践が生まれ、成長していくのかについて注目しておかなければ、最終的な答えは見えてきません。今後の発展に期待ですね。

参考文献

[1] 第百九十回国会 衆議院 財務金融委員会議録 第十八号(平成28年5月18日開議)
[2] John Kania, Mark Kramer(2011)”Collective Impact”Stanford Social Innovation Review
[3] LIFULL介護「介護保険制度とは?」

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