社会サービスとは

2017-01-04

今回は社会サービスというキーワードを解説したいと思います。
これは、私たちが安心安全な生活を送るのに欠かせない大切なものですが、実にたくさんの側面や特徴を持っています。そのため、改めてよく見てみると色々なことが見えてきます。全体像を見てみましょう。

社会サービスとは

社会サービスは日本ではあまりメジャーな言葉ではありませんが、ヨーロッパ、特にイギリスを中心に使われています。

基本的には「生活に密着し、生活の基盤を支えるサービス」のことを社会サービスと言います。もう少し詳しくすると、個人的リスクである、病気・けが・出産・障害・死亡・老化・失業などの生活上の問題について貧困を予防し、貧困者を救い、生活を安定させるためのサービスとも言えます。

歴史上、行政や市民社会、労働者組織など様々な主体によって、このようなサービスの開発や改良が進められてきました。そのうちのいくつかが、社会保障制度として制度化されたり、現在まで続く実践に繋がってきたのです。

社会サービスの種類

社会サービスにどこまで含めるのかは文化や歴史、時代、着眼点によってまちまちですが、主には以下の3つに大きく分類されることが多いです。

・現物給付
・現金給付
・地域づくり

これらをもう少し具体的にしてみると以下のものが挙げられます。

・社会福祉サービス
・医療サービス
・住宅供給
・生活環境サービス
・高齢者や障碍者の就労
・まちづくり  …等

とはいえ、社会サービスに何を含めるかは時代や国によって変わります。これは、時代や国が変われば価値観も変わっていくからだと言えます。また、解決すべき課題やニーズも地域によって異なります。地域によって、高齢者のケアが特に必要かもしれませんし、教育の充実が必要かもしれません。誰にどのような種類の支援が必要なのかによって社会サービスの種類やバランスなどは変わってきます。

社会保障との関連性

多くの先進国では社会保障制度が整えられています。社会保障制度は政府や行政が国民に対して社会サービスを提供することを目的とした制度です。

上でも書いていますが、長い歴史の中で色々な主体によって社会サービスの開発・改良が進められてきました。社会保障制度とはその中で効果的だったものの一部が制度化されたものであると言えます。

国民の生活の全体的な向上については、社会保障制度で実現できます。しかし、多様化する社会的ニーズへの対応のために、ソーシャルセクターなどの民間主体による供給が重視されるようにもなってきました。

特徴について

社会サービスとはどのような特徴を持っているものでしょうか?ここでは、「公共財であることが多い」「質が重要である」「社会サービス機関の多様性」の3点について紹介します。

公共財が多い

社会サービスは公共財であることが多いといえるでしょう。公共財については「ソーシャルセクターと公共財のいい関係」でも解説していますが、基本的にはお金を持っていないことで排除されたり(排除性)、タイミングによって手に入れることができなかったり(競合性)といったことがないものであるということです。

具体例にもあるように、資本主義のルールをそのまま適応するにはふさわしくないと思われるサービスも多いです。そのため、社会サービスは様々な方法でそのコストを共同で負担したり、効果的な供給システムを工夫したりします。

質が重要

社会サービスに限った話ではありませんが、生活に直結している分その質の重要性は高くなります。「社会的インパクト評価とは」で解説しているような成果評価が注目を集めているのもこのためであると言えます。

中途半端な質だと、その受け手である市民の生活の維持・向上は期待できませんし、むしろ迷惑になることもあるかもしれません。

「質を維持し向上させていく、そのためにもまずその質を評価する必要がある。」このような考え方が今、世界中で広がっています。

供給主体の多様さ

社会サービス機関としてどのようなものが挙げられるでしょうか?

既に書いてあるように、政府や行政が社会福祉政策ないしは社会保障の枠組みのなかで市民に対して社会サービスを提供しています。

民間の主体でいえば、まずソーシャルセクターが挙げられるでしょう。日本ではNPOと呼ばれることも多いです。慈善団体や社会的企業のようなソーシャルセクターが注目される理由は、政府や行政では担いきれなくなった領域を単に補うだけでなく、創造的に作り出し、進化させていくことができると期待されているからです。

もちろん企業も一役買っています。CSR(企業の社会的責任)やCSV戦略(共有価値の創造)のようなコンセプトや実践は、社会サービスへの関わりに重きを置いているものです。また、歴史的に労働組合や共済組合といった機関も、社会サービスの提供に一役かってきました。

このように、多くの種類の機関によって供給されているという点も特徴であると言えるでしょう。

協力して事業を行う

ネットワークを通じて、様々な組織がそれぞれの専門性を生かして事業を連携させることもよくある点も特徴と言えます。福祉や教育、医療、介護、文化、治安などといった領域の社会的な課題には複雑なものがほとんどです。つまり高齢者や子供、障害者、マイノリティといった受益者の人々を支援しようとすると、色々な角度からの事業の一体的な連携を推進しなくてはいけません。最近ではこのようなコンセプトのことをコレクティブインパクトということもあります。このことについては「インパクトを加速させる、コレクティブインパクトとは何か」で詳しく解説しています。

社会サービスは単体の組織では完結せず、あらゆる主体によるオープンな連携によって織り成されるものです。近年では、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)やPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)といった考え方のもと官民が連携していこうとする動きもあり、これからどのような展開があるのかも注目です。

サービスとして捉えるメリット

社会サービスと捉えることでどのようなメリットがあるのでしょうか?たくさんあると思いますが、主なものを2点まとめます。

経済学の知見を活かせる

サービスと言えば、経済学で頻繁に使われる言葉です。経済学は資本主義の発展とともに発達した学問ですが、その分膨大な蓄積があります。このような蓄積を導入できることで一気に知見を広げることができるようになると思われます。

また、これまで政府・行政によって提供されてきただけに、供給者側の論理で語られることが多いです。しかし、重要なことは、子供であれ高齢者であれ障害者であれ親であれマイノリティーであれ、すべての人が安心して安定した生活を営むことではないでしょうか?であれば、需要者側の論理で考えることが大切です。このような意味でも、サービスと捉えることがニーズを基にした考え方を促すという意味でメリットがあると言えます。

サービスマネジメントの応用ができる

すでに書いたように、今後より一層、需要者側の視点に立った社会サービスの提供が必要になってくるでしょう。このような考え方は、ビジネスの世界におけるサービスサイエンス等の知見を導入することも促します。

最近では、「おもてなし」や「ホスピタリティ」といった言葉でサービスの向上を目指す動きが目立ちます。このような知見を応用することで、社会サービスをより受益者や社会的ニーズに寄り添ったものにできるでしょう。

まとめ

今回は社会サービスの概要ついて解説しました。

社会サービスを起点にして捉えることで、多様化する社会的ニーズに対応するために何が必要なのかを考えやすくなるのではないかと思います。ですが、特に新しい概念でも領域でもなく、これまで何百年もの間あらゆる主体によって試行錯誤されてきたものであり、それはこれからも続いていくのだと確信できます。