コレクティブインパクトとは?社会変革を加速させるアプローチのキホン

2011年、Collective Impact(コレクティブインパクト)というタイトルの論文が発表されました。直訳では、集合的インパクトですが、このコンセプトは多くの研究者や実践者の間で支持されています。これはソーシャルセクターや企業、行政など異なる立場の主体が互いの得手不得手を組み合わせながら本質的な社会課題の解決を目指すアプローチです。果たしてその意味するところは何でしょうか?今回はこのコレクティブインパクトについて解説します。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

社会的課題の3つのタイプ

コレクティブインパクトについて解説する前に、社会的課題の類型について紹介します。やはり何事もそうですが、問題はその構造によって難易度が変わってきます。

タイプ1:Simple problems(単純な問題)

原因と結果が分かりやすい単純な問題で、対処が比較的簡単なものであると言えます。因果関係が単純なので、いろいろなところで話題になる社会問題では、このタイプの問題はむしろレアなものだといえるかもしれません。

タイプ2:Complicated problems(込み入った問題)

原因と結果の関係が分かってはいるものの、その対処に関してはより経験やスキルが必要な問題です。因果関係が分かっているので、何とか取り組もうとするものの、技術的な点や内面的な点のせいでなかなかうまく進まないといった展開が多い問題です。

タイプ3:Complex problems(複雑な問題)

因果関係が難解で様々な要素から構成されているような、対処が難しい問題です。様々な要素が幾重にも重なりあって、結果として生まれてしまう問題なので、どこから手を付ければいいのかさえはっきりしないことの多い問題です。

複雑な問題には連携が不可欠

Complex problems(複雑な問題)は企業や行政はじめいろいろな主体の日常的な活動が原因になっています。なので、これを解決しようとする場合、より多くの主体が関わり連携する必要があります。冒頭紹介した論文では、連携の仕方についていくつか分類しています。

Isolated Impact

「isolated」は孤立したという意味です。
Isolated Impactとは、単独の組織によって生み出される社会的インパクトのことを指します。

単純な問題であれば、単独の組織によって解決が可能かもしれません。しかし現代の社会問題は込み入っているか複雑な問題がほとんどです。このような問題に対して取り組もうとする場合、単体の組織や個人ではすぐに限界が来てしまうことは目に見えています。

特にこれからは、いかに企業や行政、非営利組織などの組織や個人がそれぞれの得手不得手を組み合わせながらやっていけるかが肝になってくるでしょう。

Funder collaboration(資金提供者の連携)

特定の同じ課題に対して資金などをプールしている人たちのグループや連携のことを指します。
一般的に、このようなグループは行動計画や共通の評価指標を持たず、また異なる業界やセクターを巻き込むこともしません。

Public-Private Partnership(官民連携)

特定のサービスを提供するために、行政と民間がパートナーシップを組むことを指します。
日本でもPPPとしてよく知られています。

しかし、パートナーシップの範囲は狭く、他の業界やステークホルダーの巻き込みは行われません。

Multi-stakeholder Initiatives(マルチステークホルダー)

同じ共通したテーマのもとに、異なる業界やステークホルダーを巻き込むことです。
様々な立場の組織や個人が集まるので、より広範囲なアプローチが可能になることが期待できます。

しかし、多くの場合、共通の評価指標や支援インフラを持っていないことが多いとされています。

Social sector network(ソーシャルセクターネットワーク)

個人や組織の緩やかで流動的なつながりのことを指します。
「緩やかで流動的」とは、つながりに関して特に強い束縛やルールがなく、入退場が自由であるということを意味しています。

ここでは、構造的で持続的なアプローチではなく、情報共有や短期的な連携行動がなされる場合が多いです。

Collective Impact(コレクティブインパクト)

特定の課題を解決するための、異なるセクターや主体の必要十分な参加と長い期間のコミットメントです。
共通の評価指標やコミットメント全体を支援する組織など、本質的な課題解決を目指すものです。

つまり、長期間で広い範囲の主体が参加した、強力な連携のもと本質的な課題解決を目指す連携の仕方であるといえます。

コレクティブインパクトの5つの必要条件

冒頭紹介した論文では、コレクティブインパクトを成功させるための必要条件を5つ取り上げています。ここでは5つの必要条件を解説します。

Common Agenda(共通のアジェンダ)

コレクティブインパクトには、その参加者間で共有された見通しや最終目標などが必要です。

当然のことながら、似たような社会課題に取り組んでいるとしていても、社会課題の定義やその因果関係、ビジョンなどは少しずつ異なっています。個別に取り組む場合はそのままでも差し支えないかもしれませんが、コレクティブインパクトを実現しようとする場合は、このそれぞれのズレを調整し、共通の傘のもとに調整する必要があります。

これは、誰かの独断ではなく、緻密な協議によって形作られる共通のアジェンダでなくてはなりません。

Shared Measurement System(共通評価の仕組み)

共有評価の仕組みを作ることは、コレクティブインパクトの要諦になります。

コレクティブインパクトによる取り組みの成果を計測したり、報告したりするために指標を設定しデータを集める必要があります。

しかし、ここでも何を指標とするのか、どうなれば成功で失敗なのかについて参加者間での合意が必要になります。共通のアジェンダを設定する際にしっかりとした合意がなされていれば、指標についての合意にもいい影響を与えると考えられます。

Mutually Reinforcing Activities(相互強化の活動)

コレクティブインパクトの大きな特徴の一つとして、様々な異なる背景を持つ組織や個人が参加しているということが挙げられます。この強みは互いが互いの能力を強化するように学習しあえるというところにあります。

既に述べているように、複雑な課題への対処は困難を極め、能力の強化や学習を続けていく必要があります。このようなことから、相互強化(学習)も重要な条件であると言えます。

Continuous Communication(継続的なコミュニケーション)

継続的なコミュニケーションの必要性は誰もが感じることでしょう。

コレクティブインパクトに限らず、異なる組織や個人で同じ目的に向かう際に、各参加主体間でのコミュニケーションは必要不可欠です。特にコレクティブインパクトにおいては、非営利組織や企業、行政など全く異なる組織原理をもつ組織同士で協力し合う必要があり、また、その期間も長期間です。コミュニケーションの重要性もひとしおです。

Backbone Support Organization(バックボーン支援組織)

コレクティブインパクトを実施するにあたり、参加している組織や個人間の調整や支援を行うコーディネーターが必要です。このコーディネーターの役割を担う組織を、バックボーン組織としていますが、まさに「背骨」にあたる組織として、コレクティブインパクトの推進を支援する役割を担っています。

まとめ

今回は2011年にジョン・カニアとマーク・クラマーが発表した論文「Collective Impact」をベースに、コレクティブインパクトについて解説しました。

日本でも長らく連携や協働などの大切さについては言われてきました。そういった意味では、コレクティブインパクトは特に真新しいコンセプトというわけではありません。しかし、より効果的で成果の出る連携の仕方は何なのかについて端的に分析しているという点ではとても画期的と言えます。世界中でこの実践例が生まれていくことが期待されます。

参考資料

[1]John Kania, Mark Kramer(2011)”Collective Impact”Stanford Social Innovation Review

スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク