社会起業家って何者?意味と実態について解説!

社会起業家という人々が注目を集めています。しかし、その実態は未だよく知れ渡っていないのではないでしょうか。彼らは、社会課題の解決する事業を作り出し、拡大させていくことを目指しています。世界でも日本でも、その数は増えていて、確実に存在感を増しています。今回は、社会起業家とは何かについて色々な角度から解説していきたいと思います。

社会起業家は社会課題の解決を目指す

社会起業家はアカデミックな世界よりも実践家側でよく使われています。彼らの概要について見ていきましょう。

そもそも定義は?

実のところこれといった定義がある訳ではありません。一般的には社会課題を解決するためにビジネスの手法(テクニック)を使う人たちという意味で使われています。

ところで、世界で初めて社会起業家について論文を発表したグレゴリー・ディーズは以下のように紹介しています。

  • 社会的価値を創造し、それを持続させるミッションを掲げる。
  • ミッション達成のために、新しい機会を認識し執拗に追求する。
  • 継続的に革新・適応・学習のプロセスに従事している。
  • 手持ちの資源に制約されず、大胆に行動する。
  • 事業の成果に関して支援者に対する説明責任を強く持っている。

このように見てみると最初の一つ以外は、一般的な起業家となんら変わらないとみることができます。強いて言えば、一般的な起業家は株主や顧客の利益の最大化が目的になる一方で、社会起業家は、社会的価値の最大化が目的になる点で違いがあると言えるでしょう。

社会的価値っていうのが分かりにくい

定義や意味合いについて触れて見ましたが、そうはいっても普通の起業家との境界はこれでもかというほど曖昧です。その理由の一つに「社会的価値」自体が分かりにくいことがあげられるでしょう。

一般的には、社会的価値は一定数の人々の間で了解・共有された価値と言われています。要するに、誰か一人のためではなく、不特定多数の人々に影響を与える価値ということです。

このように考えれば社会起業家には、社会的価値を可視化する社会的インパクト評価が必須と言えるでしょう。

社会サービス分野の起業家のこと?

一つの捉え方として、IT分野の起業家をIT起業家というように、社会サービス分野の起業家を社会起業家というくらいの捉え方をしておくのがいいのではないでしょうか。

社会サービスはその特性上、公共財であることが多く一般的な資本主義や企業のロジックでは取り扱いにくいということがあります。なので、以下で紹介しているように非営利組織を含めた色々な組織形態から選択する必要が出てくると考えることができます。

ソーシャルビジネスをしている人?

ところで、よく引き合いにあげれるものとして、ソーシャルビジネスがあります。これはムハマド・ユヌスが提案したものですが、以下のように定義しています。

特定の社会的目標を追求するために行なわれ、その目標を達成する間に総費用の回収を目指すと定義している。また、ユヌスは2種類のソーシャル・ビジネスの可能性をあげている。一つ目は社会的利益を追求する企業であり、二つ目は貧しい人々により所有され、最大限の利益を追求して彼らの貧困を軽減するビジネスである。

引用:Wikipedia「ムハマド・ユヌス」

ソーシャルビジネスを起こした人のことを社会起業家というと言いたいところですが、当のユヌスはこのことを『ソーシャルビジネス革命』という著書の中で否定しています。どう考えるかにもよりますが、おそらくユヌスの考えているソーシャルビジネスの事業者と社会起業家では着眼点が違うのでしょう。

組織形態は問わない

社会起業家は既に書いたように組織形態を問わず活動していることが多いと言われています。色々な法人格の組織で活動をしていることが多いのですが、そもそも法人格や組織形態にはどのようなものがあるのでしょうか?

法人格の意義

法人格だけでなく法律というのは、思想やシステムを具体化するためのものです。特に法人格は、組織の仕組みに根拠を与え社会的な実体として具体化するためのものです。例えば、株式会社は資本主義の考え方を具体化するための法人格であり、NPO法人も連帯の考え方を具体化するためのものです。

詰まるところ、どれがいいかではなくそれぞれに得手不得手があるということです。社会起業家は目指しているミッションに対してどんな仕組みや法人格が最適なのかを考え選択する必要がるのです。

様々な形態をとる

日本ではその状況によって様々な組織形態を選択できます。具体的には、

  • 非営利活動法人(NPO法人)
  • 一般社団法人
  • 株式会社
  • 合同会社(日本版LLC)

などがメジャーでしょう。特定非営利活動法人(NPO法人)や一般社団法人などは非営利法人、株式会社や合同会社(日本版LLC)などは営利法人と分類されます。

社会起業家を支援する取り組み

社会を変革するチェンジメーカーとして期待が高まっている中、彼らを支援する取り組みも次第に増えてきました。資金的にも、能力的にも、制度的にも彼らが活動しやすい環境整備が進んでいます。

支援も充実してきた

経済的・人的な支援

ビル・ドレイトンが創設した社会起業家を支援する組織「アショカ」が世界を股にかけて活動しています。アショカは社会起業家のネットワークとして、そしてシンクタンクとして事業を行なっています。日本の拠点であるアショカジャパンも有望な社会起業家をフェローとして認定し支援したり、若者の教育や企業の意識喚起などを積極的に行なっています。ちなみに、アショカでは、社会起業家を以下のように定義しています。

ソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)とは、既存の枠組みを超えたユニークな発想で、深刻かつ差し迫った社会問題の新たな解決方法を提示し、それを実行している人々です。

引用:Ashoka Japan「ソーシャル・アントレプレナーとは」

この組織が展開している事業で特徴的なことは、支援先については分野や組織形態を問わずに行なっていることです。

また、世界的には「アキュメン」や「ソーシャル・ベンチャー・パートナーズ(SVP)」、日本発の「ARUN」という社会起業家向けのファンドも存在します。これらの組織は資金供給を通して、イノベーションを起こそうと奮闘しています。

育成プログラム

日本でも「ETIC.」という組織が社会起業家を育成しようと活動しています。ETIC.は、起業家の支援を通じて社会のイノベーションを起こそうとしており、インターンシップやセミナーの実施、スタートアップコンテストを行なっています。

また、「グロービス経営大学院」も社会起業家向けのプログラムを作ったり、「社会起業大学」というビジネススクールも存在したりします。このような取り組みによってマネジメント手法を若い世代に伝え教育しています。

これらはほんの一例ですが、彼らを支援するための取り組みが日本でも事例として増えてきました。今後もこのような事例は増えていくのではないかと思われます。

制度の整備

既に書いているように色々な組織形態を選択する訳ですが、それにも利用しやすいしにくいといったものがあります。社会起業家にとって活用しやすい法人格や制度の整備はより活発な活動を促すことができます。

例えば、寄付金控除などの税制度を最適化する形でバックアップしようとしています。また、経済的なリターンと社会的インパクトを両立させやすい法人格の整備も進んできています。アメリカの「L3C」、イギリスの「CIC」という法人格がその代表例でしょう。

あらゆる所に「社会起業家」はいる!

日本の現状を考えると、残念ながら独立して社会起業家が活躍できるほど環境が整っているわけではありません。ですが、既に何かの組織に所属している人たちがその立場を利用して社会課題にアプローチする事業を作ったり、それを支援たりすることはできます。

事実、企業に務めるサラリーマンや公務員であっても、あらゆる形で取り組みを始めています。「企業の社会的責任(CSR)」や「共有価値の創造(CSV)」、「協働」といったコンセプトは追い風になっているはずです。

コレクティブインパクトというアプローチに代表されるように、ありとあらゆるところに存在する社会起業家がそれぞれの立場からできることを連携させながら本質的な課題解決を目指すことが重要ではないでしょうか。

まとめ

今回は社会起業家について解説してみました。主に実践の側で使われている言葉ですが、その中身はなかなか理解しにくいものだと思います。しかし、確実に存在感を増してきているのも事実です。

色々な考え方があるので、社会起業家とは何者か?という質問に対して、明確に答えられるものではありません。ですが、貪欲に社会的な価値を作り出そうとしている人たちとして今後も実践面でも、理論面でも理解が進められていくでしょう。