【受益者負担の原則】非営利と営利の境界線とは?

受益者負担という言葉を聞いたことはあるでしょうか?受益者負担の原則と言われることもあります。これは、利益や便益を受ける人がそれに必要なコストを負担するという考え方を意味します。実は、この受益者負担という考え方が営利組織や非営利組織の得手不得手をある程度決めています。ソーシャルセクターや企業の得意分野の境界線になったり、寄付・会費や税金の必要性の根拠になったりする「受益者負担」。今回は、このキーワードについて解説します。

便益を受ける人がそのための費用を負担する

受益者負担とは、何がしかの便益・利益を受ける人がそれにかかる費用を負担する(支払う)ということを指します。商品を作ったり、サービスを生産したりするとどうやってもコストがかかります。このコストを誰が負担するのかというところから議論が始まります。

受益者負担は企業やソーシャルセクターのそれぞれを特徴づける大切な概念です。行政が実施する施策も受益者負担について言及されることも多く、お金をとる際の根拠を説明するものになっています。

「受益者負担の原則」が成り立つか?成り立たないか?

営利と非営利の違いは、それぞれ内部にある資産を外部の人に分配することを営利、分配しないことを非営利というところにあります。ですが、受益者負担という観点から見るとまた少し違う見え方になります。

営利組織は受益者負担が成り立つことが前提

経済学の用語に「受益者負担の原則」というものがあります。Wikipediaでは、

受益者負担の原則(じゅえきしゃふたんのげんそく、beneficiary-pays principle、user-pays principle)とは、原則として市場経済において、市場の失敗が生じない限り、利益を受けるもの(受益者)が市場で決まる価格を支払い(負担し)、その経費及び生産者への利益へ回す仕組みが最適となることを述べたものである。

Wikipedia「受益者負担の原則」

と、解説されています。

例えば、車やジュース、家電などあらゆる商品を購入することができます。価格が高かったり、安かったりしますが、基本的にその価格はその商品の生産に必要なコストと利益分で決まってきます。当然と思うかもしれませんが、企業、もっと言えば資本主義はこの受益者負担の原則が成り立っているからこそ、成立しています。

非営利組織は受益者負担がうまく行かないから

非営利組織はすでに書いているように、内部の資産を外部の人に分配することに制限をかけている組織のことです。なぜ制限をかけないといけないのでしょうか?それは、本来的にターゲットにしたい人たち(受益者)が多くの場合そのコストを負担できないか、負担すべきでないとされているからです。もしも制限をかけない方法で組織を運営する場合(つまり営利組織の場合)、資産を分配されるべき人たち(株主)の権利や利益を保証しなければいけないので、このような事業は認められにくいものです。市場の失敗や公共財といった考え方は、このような背景を説明するためのキーワードになります。

また、寄付の考え方もスッキリします。なぜ寄付が必要なのか?それは、受益者が便益を受ける際にそのコストを負担できないので誰かがその分を補わなくてはならないからです。そのコストを補うために第3者である支援者が寄付やボランティアという形で参加することが求められるのです。

税金も、受益者がコストを負担できない、負担すべきでない事業を政府や行政が実施するために必要な財源ということになります。寄付との違いは、税金は国民の義務としてしのごの言わず支払わなければならないもので、寄付はあくまで自発的なものである点です。

どこまで「受益者負担の原則」を求めるか?

受益者負担の原則が成り立たない場合、受益者以外の人からもなんらかの方法(税金、寄付、ボランティアなど)で資源を調達して商品やサービスが生産されます。しかし、「受益者負担の原則」をめぐっては難しい問題があります。どこまで受益者に負担をさせるのかという問題です。

ここまでで書いてあるような、受益者の負担の原則が成り立ったり成り立たなかったりする境界線がどこにあるのかは人によって議論が分かれます。もしも、全てのものが受益者負担になった場合、医療、国防、教育、インターネット、公園や道路などあらゆるサービスを受ける場合にとんでもなくお金がかかることになります。これは言い換えれば完全自己負担・自己責任ということになります。

一方で、受益者に負担させない範囲を広げすぎてしまうと、フリーライダー(タダ乗り)といった問題や不公平感を持たせてしまう原因にもなってしまいます。そもそもこの仕組みは、社会主義や共産主義につながる考え方になります。別に社会主義や共産主義が悪いわけではないですが、現在の世界中の社会制度を考えるとあまり現実的ではありません。

このように、受益者負担の原則という考え方は、社会の仕組みや「営利組織や非営利組織、行政がどのように役割分担するか?」といった論点につながる重要な概念であると言えます。

まとめ

今回は受益者負担の原則というキーワードを色々な角度からみてみました。現代の社会構造にまでつながるなかなか深い概念だったと思います。ソーシャルセクターから見ても、寄付・会費のような支援性の高い財源と事業からの事業収入をどのように組み合わせるのかといった点で重要ではないかと思います。

参考文献

[1]グレゴリーマンキュー(2011)『マクロ経済学Ⅰ 入門編(第3版)』, 東洋経済新報社.
[2]グレゴリーマンキュー(2012)『マクロ経済学Ⅱ 応用編(第3版)』, 東洋経済新報社.