社会的インパクト評価人材の育成方法

2017-08-16

これまでもインパクト評価は政策評価などで行われてきましたが、案件数もそのための人材も少なくて済みました。しかし、慈善団体や社会的企業のようなソーシャルセクターをはじめとする民間主体が活発に社会サービスを供給するようになれば、その分評価が必要なシチュエーションは急増します。そうなれば、深刻な人材不足に陥ることは想像に難くありません。

このような問題意識から、今回は社会的インパクト評価人材の育成方法について考えてみます。

社会的評価人材の育成方法

社会的インパクト評価人材を育てる方法についてですが、主に以下の方法が考えられそうです。ですが、他にも工夫次第でいくらでも考えられそうなのであくまで参考例かなと思います。また、どの育成方法も、あくまで社会的インパクト評価を実施しようという意識・意欲が大前提であるという点は外せないと思います。なお、このサイトでもたまに紹介している「社会的インパクト評価イニシアチブ」でも、人材育成について検討がなされています。

資格認定制度

資格は一定程度のスキルセットを持っていることを証明できる有効な方法です。また、段階的にランクを設定すれば、徐々に能力を引き上げることもできます。

社会的インパクト評価に係る一連の能力を定義し、その知識と能力を備えていることを証明できる資格制度があれば、評価人材の効率的な育成が可能でしょう。また、そのような人材の探索コストを削減できるので、マッチングが簡単になります。これにより評価人材を必要としているところに最適な評価人材が供給される体制も作れるでしょう。

しかし、難しい点として、スキルセットの定義を明確に行え、またコンセンサスが取れるかどうかという点が挙げられます。また、資格自体の使い勝手も重要です。資格を持っていることのメリットをどこまで作れるのかも考慮する必要があるでしょう。

資格認定に関しては、立場や世代に関わらず多くの人に対して活用できる方法だと思います。

既にある具体的な事例としては、日本評価学会が運営している評価士の資格認定が挙げられます。

ピアサポート体制

仲間同士のサポートが実は大切だったりします。「うちでやったことが○○だった」とか、「他でやったことが○○だったから、うちでは△△してみよう。」といったように学び合うことができます。

また、社会的インパクト評価を実施するにあたり、最初にぶつかる壁は何から手を付けるべきか分からないという点だと思います。このときに、いきなりプロや専門家に話を持っていくことはかなり難しいでしょう。近くにいる仲間の事例を知ることで始めるハードルが下がることが期待できます。このようなことから、この方法は主に、実践的な立場にいる人材に対して有効でしょう。

伴走型支援

これから社会的インパクト評価を始めようという人にとっては、起こることすべてが不確実なものです。この時にすぐに気軽に相談できる相手がいれば、安心感にもなりますし、効率的に評価のプロセスを進められます。

能力を付けるのに最もいい方法は、実際にやってみることです。言い換えれば、実際にやってみることを支援するための伴走型支援は、実践的な立場にある人材の能力強化に有効な方法だと思います。

大学でのプログラム

やはり教育機関での人材育成は基本中の基本でしょう。特に大学生は、これから専門性を身に付ける人材であり、一通りのまとまったスキルセットや知識を1から習得することが可能です。

また、大学での教育に加えて、実際の社会的インパクト評価の実務や現場にオブザーバーないしは評価者として参加することで、現場に即した有機的な能力を身に付けることが可能です。何度も言っているように実際にやってみることが一番能力を押し上げます。

ポスドク人材の活用

高度な社会的インパクト評価を実施する場合、より高い専門性が必要になります。これに耐えうる人材を育てるには、既に高い専門性を持った人材に社会的インパクト評価をできるようになってもらうという方法が考えられます。

実際に、アメリカではデータサイエンティストを育成するために、ポストドクターにインターンシップの機会を与える制度が始まっているようです。このようなやり方は日本の社会的インパクト評価の分野でも応用できると考えられます。特に、社会調査法や分析手法等を習得しているポストドクターは社会的インパクト評価と相性がいいと考えられます。

データサイエンス企業の参加

データサイエンス企業の知見や能力を借りるという手も実は考えられます。今世界でも日本でもデータサイエンスから価値を生んでいる企業が次々と生まれており、中には既に上場している企業もたくさんあります。FinTechやAI、IoTといったトレンドもこの流れに拍車をかけています。

このような企業の能力や知見を活用できるようにすることで、社会的インパクト評価人材全体の能力が底上げされると考えられます。例えば、データサイエンス企業からのプロボノも有効でしょう。もちろん本業として、社会的インパクト評価のプロジェクトに参加するという方法もあり得ると思います。

インターディシプリンな研究促進

ディシプリンとは研究における分野のことを指していて、インターディシプリンは分野横断的な研究を指します。

これは他の育成方法とは少し毛色が異なりますが、アカデミック分野における人材育成についてです。既に述べた通り、社会的インパクト評価の考え方は様々な分野にまたがります。社会的インパクト評価を軸として分野横断の研究を進めていくことで、様々な切り口から知見を広げていくことが可能でしょう。

また、このような社会的インパクト評価に関わる研究の蓄積は、未来の評価人材の高度化を促します。研究の蓄積から学んだ若い人材が次の時代の評価人材を担うことになるでしょう。

まとめ

今回は社会的インパクト評価人材の育成についてまとめてみました。
やはり人材は何にも勝る資産です。人材育成の体制を整えることが、社会的インパクト評価の普及に直結すると思います。あの手この手を尽くしつつも、組織的で一体的な人材育成が求められているように感じます。

私個人としても、これらの育成方法について吟味しつつ、取り組んでいきたいと考えています。