社会的インパクト評価のプロセスの一例

社会的インパクト評価のプロセスには色々な種類があるので、一概にいえるものではありませんが基本的なところは共通しています。今回は社会的インパクト評価のプロセスをまとめてみます。ちなみに、ここで解説しているプロセスは一つの組織内でインパクト評価を実施することを想定しています。

社会的インパクト評価の認識

まずは社会的インパクト評価が重要であり、実施すべきであると認識するところから始まります。

社会的インパクト評価実施の意思決定

一番初めに、社会的インパクト評価を実施するというコンセンサスを組織内でとる必要があるでしょう。この時重要な役割を持つのはマネジメント層であることは間違いないでしょう。トップによる「やるぞ!」という掛け声がなければ、社会的インパクト評価に関わるこの先のプロセスを実行していくことはかなり難しいでしょう。

また、社会的インパクト評価をどのように活用するのかという点もはっきりと示しておく必要があります。評価の結果を、関係者への報告に使いたいのか、それとも事業の改善や開発に使いたいのかをはっきりとさせておくことで、プロセス全体を円滑に進めることができます。

セオリー・オブ・チェンジやロジックモデルで事業の点検

内部で意思の統一ができたら、次は様々な関係者を巻き込む段階に進みます。

具体的には、色々な関係者を巻き込んでのセオリーオブチェンジロジックモデルの作成・点検を行います。
セオリーオブチェンジは、組織の最終目標やアウトカム目標、事業のつながりを確認するためのフレームワークです。
一方、ロジックモデルは行っている事業がどのようにインパクトに繋がっているのかを因果関係を基に視覚化できるフレームワークです。これらのフレームワークは、社会的インパクト評価を実施するうえで、組織の事業の全体観を掴む手助けをしてくれます。

また、これらのフレームワークを活用することで、様々なステークホルダーとの合意形成が容易になることも期待できます。

エビデンスのレベルの設定

実際に分析の段階に入る前に、どの程度の厳密性で実施するのかを明確にしておくことが必要です。

統計分析をしたことのある方なら分かるかもしれませんが、分析の厳密性は追い求めればどこまでも追求できます。しかし、現実的には組織の能力や資金などの資源には限りがあり、適切なレベルの厳密性でなければ実現することは難しいです。

社会的インパクト評価を一般向けの説明用に活用するなら、それほど厳密性は必要ないかもしれません。専門家との共同実施で論文に載せるようなレベルで活用するなら、学術的な厳密性が求められるでしょう。このように目的に合わせて厳密性を判断する必要があります。

分析計画

ここでは、ここまでの段階で作成したセオリーオブチェンジやロジックモデル、厳密性を基に分析計画を立てます。計画をきちんと立てることで、プロセスの途中で混乱が生じることを避けられます。

指標設定

事業の成果を説明するのに最適な指標を設定する段階です。
社会的インパクト評価で最も難しいところと言っても過言ではなく、セオリーオブチェンジやロジックモデルを基にして重要な指標を洗い出します。

指標設定の難しさを克服するために、データを蓄積し共有するといった工夫もありこのような取り組みをうまく活用することも今後重要な選択肢になるでしょう。

データ入手方法の決定

データを入手する方法を決定します。主にデータの取得方法としては以下のものが考えられます。

・アンケート調査
・インタビュー調査
・実験
・インターネットから収集 等

設定した指標に合わせて、このような入手方法を選んだり組み合わせたりして実際にデータを集める段階に進みます。

データ分析

ここまでくればデータを入手し分析にかける段階に進めます。この段階の特徴はこれまでと違い技術的な側面が強く出てくることでしょう。

データ設計

データには形式や尺度などによって実に様々な種類のデータが存在します。
そして、多くの場合、具体的な分析をする時は、色々な種類のデータを扱う必要があります。そのため、あらかじめどのような種類のデータを扱うのか、そのデータをどのように保存して管理するのかを決めておかなければいけません。このことをデータ設計と言います。

このステップでは、どのようなデータ分析をするのかを特定のものに絞り切らないことが重要です。確かに、指標を設定したり、データの入手方法を設定した際に大体の目星がつくことが多いです。しかし、データがちゃんと集まる保障はここではまだありませんし、予測していない出来事もあると思われます。ですので、手法を特定し過ぎずに、色々な手法を適応できるように設計する必要があります。このようにすることで、予期しない発見をすることも期待できます。

データ収集・管理

決定したデータの入手方法にしたがって、データを入手します。

入手したデータを適切な形で保存します。データの保存と管理にあたっては、データベースをつくることが一般的です。この時、バックアップも定期的に確実にとっておかなくては不測の事態が起こった時にすべてが振り出しに戻ってしまいます。特に取得したデータが貴重で、そう何度も入手できないものであればあるほど神経質になる必要があると思います。

データの下ごしらえ

データを入手したままの状態では、多くの場合分析にかけることはできません。それらはそれぞれ別々の形式で保存されていたり、分析にかけるためのテーブル(表)に入れておく必要もあるかもしれません。余計なデータもある場合が多いです。

このような不都合な部分や不要な部分を削除し全体の形を分析に適切な形に整えておかなくてはいけません。

データを分析手法の確定と実行

集めて処理したデータを実際に分析にかけます。
分析手法を目的と集めたデータに合わせて確定します。ここではある程度技術的な点も考慮しなければいけません。難しい手法を使っても大変ですし、時間がかかりすぎるのも考えものです。特に分析結果を見る人たちにとってわかりやすいものにしなければいけません。

結果の活用

ここからはクライマックスで、社会的インパクト評価の結果を活用する最終段階になります。

分析結果の解釈

まずは、分析結果を解釈する必要があります。
よく勘違いする人も多いのですが、データを分析にかけて出てきた結果はあくまで事実でしかありません。これは客観的に捉えなければなりませんし、誰かの思い込みや意思が入ってはいけません。

この客観的な分析結果からどのようなことが言えるのか、それは妥当なのかを検討する必要があります。
ここで出てくる解釈は一つだけではないかもしれませんし、人によって違うかもしれません。なので、しっかりとした議論が必要になるでしょう。

改善、報告、モニタリングに活用する

最初に決めた目的に沿って、社会的インパクト評価にかかる結果を事業の改善や支援者や関係者への報告、モニタリングに活用します。あくまでここが一番大切な部分なので、ここまでしっかりやって初めて一区切りですね。

まとめ

今回は社会的インパクト評価のプロセスについて順を追って解説しました。

このようにみると、山場は「関係者を巻き込む」「指標の設定」「分析にかける」「評価結果を活用する」の4つではないかと思います。
技術的な話はどうにかなるかもしれませんが、一番大切なのは積極的に成果と向き合い自ら成長していこうという意識なのかもしれません。

今回の記事が、インパクト評価に取り組もうとする方々の力になることができれば幸いです。