共有評価(シェアードメジャメント)がうまくいくか確認する、11の基準

共有評価(シェアードメジャメント)システムの作り方」でも解説しているように、共有評価(シェアードメジャメント)はいつでもどこでも適用できるわけではありません。では、向いているか向いていないかを判断することはできないのでしょうか?実はその判断基準になるものが考えられています。これは11個の基準により判断します。今回は、システムが向いているかどうかをレビューするための11の基準について解説します。

そもそも、共有評価とは?

共有評価とは複数の事業間で社会的インパクト評価のプロセスや指標を共有することと言います。詳しいことは、「Shared Measurement/共有評価がインパクトを加速させる」、「シェアードメジャメント/共有評価、5つのメリット」、「シェアードメジャメント/共有評価を阻む課題とは」で解説しています。

共有評価の難しさの1つに、向いているところと向いていないところがあるという点があります。社会的インパクト評価の性質上、比較のしやすさや事業の性質などといった要因からこのようなことが起こります。

このためこれから解説するように「セクター」「証拠」「モメンタム」の3つのテーマに分類された11個の基準によって共有評価が向いているかいないかをレビューし、1番いいやり方を模索します。このステップを踏むことによって、これから取り組む共有評価の現状をレビューすることができます。

セクターについて

これは、特定の社会課題に取り組んでいる組織や業界の状況についてです。セクターの状況が共有評価に前向きなのか、どのような事業が多いのかなどということなどについて考えます。

セクター/サブセクターでの首尾一貫性

同じ社会課題に対して複数の組織がそれぞれ事業を行なっている場合がほとんどです。ソーシャルセクターに限らず、企業や行政組織も含みます。しかし、それぞれの組織が同じ受益者や同じ目標に対して事業を行なっているとは限りません。

同じような受益者に対し、類似した目標を掲げている場合は共有評価システムの構築にいい影響を与えますが、バラバラの場合は悪い影響を与えると考えられます。

介入範囲の一致度

アプローチの方法も組織によって変わります。例え同じタイプの受益者に対する社会サービスを供給していたとしても、その具体的な方法はバラバラであることも多いです。

アプローチが似通っていれば、共通の社会的インパクト評価を行うことは比較的簡単ですが、バラバラであれば比較をすることも難しくなってしまいます。この点で、似通ったアプローチを取っているセクターは共通評価に向いていると言えます。

協働のためのインフラ

連携を推進していこうとする組織やネットワークがあるかどうかも基準の1つです。連携するためには密接な情報共有やプロセスのレビューなどが必要です。また、運用段階になった時に情報共有や参加組織の能力強化・教育など円滑な運営をしていく上でも、これらのインフラは必要になります。

システムを支えるためのネットワークや組織があるか否かは、向いているかどうかをレビューする上で重要な基準になります。

セクター内の組織が、他のセクターで協働している

特定のセクター内の連携はよくありますが、そのセクターを越えて連携した経験がある組織が多い方がうまくいきやすいです。これは、連携したことのある経験のある方が、具体的なシステム作りになった時、円滑に運営しやすいからだと言えます。

受益者のニーズとニーズの原因が理解されている

現在の社会問題の構造は非常に複雑になっていて、その理解自体難しくなっています。因果関係が曖昧な場合、各個人や各組織によってこの認識がバラバラになってしまいます。

また、因果関係について合意がされていない場合、事業も改善や変更が繰り返され変化するのがほとんどです。この時、その社会サービスの社会的インパクト評価の方法も変化します。この状態では、共有評価システムを作るには向いていない場合が多いとされます。

証拠について

社会的インパクト評価の根拠になる部分の性質についてのテーマです。社会的インパクト評価は、事業と成果の因果関係や指標の設定、データの集め方などに関して信頼性や妥当性が求められます。共有評価に関してもこれは同じです。

有効性についての現時点での証拠

どのような事業が効果的であるかについての根拠があるかどうかについてです。
実際、事業と成果の因果関係に関しては明確で絶対的なものはありません。大学や研究機関といった専門家と情報交換しつつ、合意を取っていくことが大切です。

逆に、決め打ちで特定されている場合は共有評価には向いていないと言えます。例えば、助成財団や政府・行政によって、支配的な基準が決められている場合がこれにあたります。

社会的インパクト評価に対する既存のアプローチ

社会的インパクト評価について、その指標やプロセスに関して特定の評価方法が存在するかどうかという基準です。ある程度色々な評価手法や指標が開発されていることも重要です。

専門家や研究者などアカデミックな補強がされていない場合や評価手法に一貫性がない場合などは共有評価には向いていないと考えられます。

効率性を証明することへのプレッシャー

助成金や補助金、寄付金などの出し手が、どのような意識や考え方を持っているのかも基準の1つになります。資金の出し手が、どの程度の成果をあげられているのかに注意がいっている場合は、システム作りにいい影響を与えると考えられます。

モメンタム(勢い)について

モメンタム(勢い)としていますが、カジュアルに言い換えれば「ノリ」と言ったところでしょうか。セクター内の組織が共有評価に対しての「ノリ」がどうなのかということに関するテーマです。

セクター内での知覚

関係する組織間で共有評価のメリットに気が付いているかどうかが基準になります。当然のことながら、メリットを知っていればそれがモチベーションにもなります。情報共有が十分になされ、参加メンバーが高いモチベーションを保つことができていれば、具体的なシステム作りの段階に入ってもより良い連携が可能になります。

参加する組織への適切なインセンティブ

政策や資金調達(ファンドレイジング)、業務環境の変化などといった環境の変化が共有評価を必要とするようになっているかも重要な基準になります。共有評価システムを作ることがファンドレイジングなどに良い影響を与えると参加メンバーが感じれば、より高いモチベーションを維持することができるでしょう。

一方、硬直化してマンネリ化した環境であったり、逆に環境の変化が激しかったりするとシステムを作るモチベーションは低くなってしまいます。

コミットされたファンダー

共有評価(シェアードメジャメント)システムの開発にはコストがかかります。このコストを受け持てる資金力と影響力を持った資金提供者が必要です。このような資金提供者がいるかいないかも重要な基準になります。

まとめ

今回は共有評価を行う際に、向いているかどうかをレビューするための11の基準を紹介しました。これらの全ての基準がプラスである必要はなく、自分たちの置かれた状況の情報整理として使うのがいいでしょう。

社会的インパクト評価のシステムを共有することはとても強力な方法ではありますが、いきなりこの方法に飛びつくことは非常にリスキーです。効果的に活用するためにもしっかりと事前に自分たちの置かれている状況をレビューしてみることは大切なことだと思います。