【休眠預金活用】使われていない預金を活用してNPO等を支援する仕組みが進行中!

2017-10-26

日本では、一定期間動きのない預金(休眠預金)を子供や若者の支援やまちおこしのような社会的な目的に活用しようという動きがあります。2016年末に国会で法案が通り、具体的な制度設計が進んでいて注目が集まっています。期待と困難入り混じる、この休眠預金活用法案について解説していきます。

休眠預金とは?

まず「休眠預金」とは何ぞやというところから。普段あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、全ての人に関わるものだとわかってもらえると思います。

一定期間取引されていない銀行口座のこと

休眠預金とは、一定期間引き出しも預け入れもされていない銀行口座にあるお金のことを指します。2016年に可決された法案では10年間入金も引出しも異動もないものを指しています。

この休眠預金は、日本で毎年1000億円程度生まれているといわれています。このうち、400~500億円が払い戻しされていますが、それでも500億〜700億円程度が帰るあてのないお金ということになります。

今のところ、この帰るあてのないお金は基本的にその銀行の収入となっています。全国銀行協会の内規によれば、これらの休眠預金は銀行の収入にしても差し支えないということになっているのです。法律的にも5年から10年経てば、預けているお金の権利はなくなるということになっているようです。

休眠預金が生まれるワケ

年間数百億というバカにならない金額の休眠預金が生まれているわけですが、なぜこれだけの休眠預金が生まれるのでしょうか?

実は、個々の休眠口座にあるお金の金額は大きくはありません。

例えば引っ越しによって別の地域に移った際、新しく銀行口座を開くことがあると思います。この場合、前にいた地域で持っていた銀行口座が残るわけですが、そこに少しの金額しか入れていなかった場合、忘れてしまう人も多いでしょう。このお金を引き出そうにも、引き出しに現地に行く方が高くついてしまう事もあり、結局そのままになってしまい休眠預金となるといった事例があります。

また、口座の名義になっている人が亡くなった場合も、休眠預金が生まれる理由になっています。

休眠預金が社会的事業に活用されるワケ

そんな休眠預金も、前述のとおり基本的には銀行の収入になることも多いのですが、もとは一般市民の預金です。

もともと一般市民のお金であったのであれば、そのお金を直接自分たちのために使えるようにした方がいいのではないか?というのが休眠預金活用の基本的なコンセプトになっています。

休眠預金活用の海外での動向

休眠預金の活用は、海外で盛んに議論され、具体的な仕組み作りも進んでいます。その代表的な事例を紹介します。

アイルランドの休眠預金の活用

アイルランドはイギリスの隣の国ですが、この国では早くから休眠預金の活用を議論していました。

2003年に休眠預金基金ができ、2005年には改正休眠預金法を定めています。これらを通して、休眠預金を社会的な目的へ活用する仕組みを作っています。

韓国の休眠預金の活用

韓国は比較的社会的企業等の支援が盛んである国でもあり、もちろん休眠預金の活用も積極的です。

休眠預金の意識が高まったのは2003年ごろからです。この頃には、銀行の収入の15%程度を休眠預金が占めていて、そのことが意識を高めていきました。その後2005年にこれらの休眠預金を社会事業に活用しようという機運が高まり、2008年には休眠預金財団(現在の微笑金融中央財団)が発足しました。

イギリスの休眠預金の活用

イギリスは世界的に積極的な国です。イギリスの休眠預金を語る上で外せないのは、Big Society Capitalの存在です。

イギリスでの休眠預金は、Reclaim Fund(請求基金)というところに移され、Big Lottery FundやBig Society Fundといった金融組織から助成金や投融資の形で社会的組織やその支援組織へ資金供給されます。

日本でも休眠預金活用法案が2016年に可決されました。

日本でも休眠預金を活用していこうと法律が作られました。その名も「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」!(以下、長いので休眠預金法案と言います。)休眠預金法案の大まかなイメージは以下のようになります。

休眠預金活用法案スキーム
引用:休眠預金等に係る移管及び管理並びに活用に関する法律案


ややこしいですが、休眠預金を1か所に集めて管理して、それを各地の資金を分配する団体に配分し、そこから現場の団体に資金が渡るという流れになっています。ここまでややこしくなったのも、ガバナンスや透明性を意識してのことでしょう。

この法律の主なポイントは以下の通りです。

  • 2019年1月1日に発生する休眠預金から対象になること
  • 子供や若者の支援や生活を営む上で困難を有する者の支援、地域の活性化といった限定した分野での活動を資金提供の対象としていること
  • 成果の評価(社会的インパクト評価)を必須として、その成果を大きくしていくことが求められること
  • 民間の創意工夫が促されるよう配慮されること
  • 自立した担い手を育て、資金調達の環境を整えること
  • 説明責任やガバナンスの強化を徹底的に行うこと

ガバナンスをどうしていくのかといった点やより成果志向を求めていく点などいくつか乗り越えるべき壁がありますが、この仕組みがうまく日本社会にとけこむことができれば、年間約500億円程度の資金が民間による社会サービスの財源となるので、大きなインパクトがあると思われます。

たまに誤解があるのですが、決してそのままにされた預金が没収される訳ではありません。10年以上経っても申告すれば、ちゃんと帰ってくるので焦った人は安心してください。

とは言え、現在も制度の設計や作り込みが今後どう進んでいくかはまだわかりません。期待と困難の狭間で、今も議論が進められています。

まとめ

今回は休眠預金という新たな財源や仕組みについて解説しました。休眠預金を活用する仕組みが完成すれば、民間の様々な主体による社会サービスの財源が生まれ、より活発になると思われます。

但し、休眠預金という性格上、その資金をどう管理するのか、各地域の実情に合わせた仕組みにできるか、そして何より社会的なインパクトををちゃんと生み出せるのか、それを評価できるかといった点は今後しっかり考えていかねばいけない点でしょう。

参考文献

[1] 休眠口座について考えるための情報サイト
[2] 休眠預金活用推進議員連盟「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律案 説明資料集」(平成 27 年 8 月 25 日版)
[3]内閣府(2011)「日本における休眠口座基金の創設プランの策定 中間調査報告書 1月20日版」
[4] 内閣府「民間公益活動促進のための休眠預金等活用
[5] 日本経済新聞「
休眠預金活用法が成立 年500億円を活用