チームの力と個の力で大きなインパクトを目指す!

サッカー選手や監督がよく「チームの力と個の力」という言い回しを使います。チームの力とはパス回しなどのチームワークのことを、個の力とは、選手一人ひとりのスキルの高さを指しています。社会的インパクトを取り巻く取り組みについても同じことが言えるのではないでしょうか?今回は社会的インパクトを生み出す取り組みにおける個の力とチームの力について考え、これを切り口に異なるコンセプトや実践同士が連動し合う重要性について考えてみます。

チームの力と個の力の視点の違い

今回は話をシンプルにするために代表的なものとして、チームの力の向上を目指すコンセプトとしてコレクティブインパクトを、個の力の向上を目指すコンセプトとしてベンチャーフィランソロピーを取り上げます。

コレクティブインパクトとは

コレクティブインパクト(集合的インパクト)とは、特定の課題を解決するために、異なるセクターや主体の必要十分な参加と長い期間のコミットメントのことです。

社会問題は複雑で、あらゆる角度からのアプローチを必要とします。また、それぞれのアプローチが効果的に連携することも求められます。このような取り組みがコレクティブインパクトの特徴です。

より詳しい内容については、「インパクトを加速させる、コレクティブインパクトとは何か」や「Shared Measurement/共有評価がインパクトを加速させる」で解説しています。

それでも高い「個の力」があってこそ

様々なプレイヤーの密な連携によって大きな社会的インパクトを生み出そうという取り組みをコレクティブインパクトと言いました。とはいえ、そこに参加する組織や個人は何でもいいのでしょうか?

そんなことはないはずです。一つひとつのプレイヤーがしっかりとした組織力や効果的な事業を持っているからこそ、それらがまとまり、かみ合った時に大きな成果が表れるのだと思います。

冒頭のサッカーの例えで言えば、チーム力の他にも個の力がなくてはだめだということです。では、個の力を伸ばすためにはどのようにすればいいのでしょうか?もちろん、それぞれの組織が努力をするということは大前提です。その上で、個の力を伸ばすことにフォーカスしている手法に、ベンチャーフィランソロピーというものがあります。

ベンチャーフィランソロピーとは

ベンチャーフィランソロピーは1980年代後半にアメリカから始まった手法です。特徴として、支援先により強く関与しつつ、資金提供と能力強化の両面から支援する点が挙げられます。ベンチャーキャピタルの手法を使っているところが最大の特徴です。

より詳しい内容については、「ベンチャーフィランソロピーとは」や「ベンチャーフィランソロピーの4つの論点」をご覧ください。

ベンチャーフィランソロピーは、ベンチャー企業をベンチャーキャピタルが支援するように、将来有望な社会的組織に対して強力な支援を行います。ですが、その対象はほとんどの場合単体の組織です。

相性はいいの?わるいの?

コレクティブインパクトとベンチャーフィランソロピーをよく見てみると異なる考え方をベースにしていることが分かります。その一方で、共通点も多いことも事実です。ここでは、これら2つのコンセプトの共通点と相違点、そして相性について解説します。

共通点

コレクティブインパクトは協働によるより大きな社会的インパクトを目指すことを目的としています。また、ベンチャーフィランソロピーも同じく社会的インパクトを最大化することを目的としています。

また、両方とも対象とする組織の形態については、より広い範囲を想定しています。コレクティブインパクトの場合、様々な異なるセクターの組織間連携を想定しており、ソーシャルセクターから企業、行政といった幅広い組織の参加を求めています。ベンチャーフィランソロピーも、支援対象は非営利組織から企業のような営利組織まで様々です。大きな成果をあげるためには、組織の形態はあくまで手段にすぎないということが言えます。

相違点

既に述べているように、ベンチャーフィランソロピーは主に単体の組織を対象としています。言い換えれば、より大きな社会的インパクトを生み出すことのできる組織を育成しようとしていると言えます。

一方、コレクティブインパクトは必要十分な複数の組織の協働による社会的インパクトの創出を目指しています。つまり、より大きな社会的インパクトを目指すためには、様々な組織による連携・協働が必要であるというスタンスであると言えます。

このように、2つのコンセプトには、単体の組織による社会的インパクトの創出か複数の組織の連携による社会的インパクトであるかという相違点が存在します。

2つのコンセプトの相性

ここまで、単体の組織を支援するベンチャーフィランソロピーと複数の組織の協働によるコレクティブインパクトの2つのコンセプトを比べてみました。社会的インパクトの最大化という同じ目標に対して、異なるアプローチをとっていることが分かります。ここだけ見れば、お互いが相反する関係になるのではないかとも考えられます。

しかし、ここで重要なのは、2つのコンセプトやその実践がどうお互いを高め合えるかだと思います。「社会的インパクトの最大化」というゴールを決めるために、「個の力」も「チームの力」もどちらも高めなければなりません。

例えば、コレクティブインパクトにおいて足りないピースがあるのであれば、ベンチャーフィランソロピー組織がそれにふさわしい組織を育て上げるということができるでしょう。また、コレクティブインパクトのチームがベンチャーフィランソロピー組織にとっての強力なネットワークになれるでしょう。このような相互強化できる関係になることも十分考えられます。

まとめ

コレクティブインパクト(集合的インパクト)もベンチャーフィランソロピーも最近になって一気に注目されるようになったコンセプトです。しかし、中身をよく見てみると少し異なる考え方をベースにしていることが分かります。しかし、その違いが個性を生んでおり、相互に強化し合える関係になれるのではないかと考えられます。

また、今回のコレクティブインパクトやベンチャーフィランソロピーの比較から重要な視点が導けます。それは、たくさんのコンセプトや実践が世界中で生まれている中、大切なのはどのように他のコンセプトや実践と高め合える関係になるかではないかという点です。