ベンチャーフィランソロピーとは

2017-01-29

ソーシャルファイナンスを語っていると、ベンチャーフィランソロピーというものがよく登場します。フィランソロピーとは一般的に社会的な目的を目指した民間資金のことを指します。では、それにベンチャーとついた場合、どのようなものになるのでしょうか?今回は、ベンチャーフィランソロピーについて解説します。

ベンチャーフィランソロピーとは何か?

ソーシャルファイナンス、社会的価値をつくりだす金融!」でも簡単に紹介しているように、ベンチャーフィランソロピーとは「ベンチャーキャピタルの手法を用いて社会的な組織の社会的インパクトを最大化することを支援する」というコンセプトや手法を指します。言い換えれば、これまでの伝統的なフィランソロピーに対して、ベンチャーキャピタルという全く違う分野のしかもアクティブな手段を適応するという考え方や実践のことを指していると言えます。

ベンチャーキャピタルについて

ここで一旦、ベンチャーキャピタルとは何かについての解説をします。

ベンチャーキャピタルは、今後大きな成長を見込める未上場のベンチャー企業に対して、投資を行い、同時に経営支援も行うファンドのことを指します。ベンチャーキャピタルは、爆発的な成長の可能性があるベンチャーを具体的に成功させるために資金、能力強化の両面から支援します。そして、支援先のベンチャー企業がM&Aや上場をした際のリターンを得ることを目指しています。

世界を席巻しているGoogleやApple、Facebookなどのような企業もどこかのタイミングでベンチャーキャピタルによる支援を受けており、世界を変える立役者して大きな注目を集めているプレイヤーでもあります。

ベンチャーフィランソロピーの特徴

では、ベンチャーフィランソロピーはどのような特徴を持っているのでしょうか?近年世界的にその数を増やしているといわれていますが、実は共通の定義については合意に至っていません。しかし、以下の7点の共通した特徴が挙げられるとされています。

・より強い関与
・組織の能力強化
・カスタマイズされた資金提供
・非資金的サポート
・複数年にわたるサポート
・ネットワークへの巻き込み
実績評価

ベンチャーフィランソロピーのプレイヤー

ではどのような主体がベンチャーフィランソロピーの手法を採用しているのでしょうか?主に以下の3種類が挙げられます。

・独立系ベンチャーフィランソロピー組織
完全に独立したVPです。ベンチャーキャピタルや一般的なビジネスの世界にいた人達が彼らの知見と経験を活かして設立することが多いようです。

・財団
財団はこれまで、助成金の形で主にソーシャルセクター組織を支援してきました。しかし、より社会的インパクトを大きくしようと考えると、もっとアクティブな資金提供と能力強化が必要です。そこで、財団は完全にベンチャーフィランソロピー組織に鞍替えしたり、部分的にその手法を活用したりしてより積極的なアプローチをするようになりました。

・企業のCSR担当室
CSR(企業の社会的責任)の一環で、社会的な組織を資金面・人材面で支援する企業が多くなってきました。その内のいくつかは、ベンチャーフィランソロピーの手法を採用しているところがあります。企業にしてみれば効果的に資金を活用したいので、資金面・人材面での支援をする方がむしろ効果的であると思われるのでしょう。また、企業の保有している資源やネットワークを活用することで、より大きな社会的インパクトを生み出すことも可能になります。

考えていること

ベンチャーフィランソロピーの実践ではどのようなことが考えられているのでしょうか?それぞれの要素をまとめてみます。

まず、支援先。
支援先の組織は、慈善団体、社会的企業、一般的な企業のように分類ができます。これらの組織の性質や特徴に合わせて資金提供の手法を変えて実際に支援がなされます。

支援先のステージも重要です。
ステージというのは組織の成長段階のことで、シード、アーリー、スタートアップ、グロース、スケールなどのように分類されます。この分類の仕方は人や組織によってまちまちですが、駆け出しの段階の組織(または個人)とイケイケどんどんの組織とでは必要な資金の量や能力も異なってくるので、こう言った意味で適切な支援を使い分けようというわけです。

分野的なカバー範囲についても考えます。
とても狭い分野(教育支援、障がい者の雇用など)を支援対象にするのか、それとも別段分野を特定せずに支援をしていくのかを設定します。ある分野に特化すれば、それだけ密度の濃いネットワークができ、知見の蓄積ができます。一方、広い分野に設定すれば、より広い範囲のネットワークを構築でき、その分異分野融合によるイノベーションが期待できます。

最後は地域的なカバー範囲です。
ローカルでやっていくのか、国レベルでやっていくのか、グローバルな展開をしていくのかといった点を考えます。歴史や文化、生活スタイルによって、社会課題を解決するために必要なアプローチは変わってきます。

広がるチャンス

実は近年ベンチャーフィランソロピーへ追い風が吹く情勢になっています。この追い風に乗って世界的にも勢いを強めています。では、具体的にどのようなチャンスがあるのでしょうか?

伝統的な財団がベンチャーフィランソロピーの手法を使い始めた

既に解説したように、伝統的な財団がこれまで通りの助成金だけでなくもっと色々な手法を採用するようになっています。この背景にはやはり本格的に社会的インパクトを生み出せるようにしていかなくてはならなくなったことが挙げられます。この時に財団が注目する手段の一つがベンチャーフィランソロピーです。

財団はこれまで助成金の形で資金提供を行ってきました。これまでの活動の中で培ってきた社会的な組織とのネットワークや信頼関係、ノウハウを生かせることが大きなメリットになっています。

企業がベンチャーフィランソロピーを活用するようになった

企業はもともとコーポレートフィランソロピーの名のもとでプログラムを実施したり、CSRとしても取り組みをしています。この延長線上に、社会的な組織に対して支援をしようとする企業も現れてきました。このときベンチャーフィランソロピーはベンチャーキャピタルの手法を使っていることもあり、ある意味企業の文化と馴染みやすいコンセプトであると言えます。

新たなスキームが開発され始めた

ソーシャルインパクトボンド(SIB)やシェアードメジャメントコレクティブインパクト等といった新たなコンセプトやスキームが続々開発されていることも追い風であると言えます。何事も始まりには初期投資や実験が必要です。このような比較的リスクの高いところには資金が集まりにくいのですが、ベンチャーフィランソロピーはこのようなところにこそ力を発揮します。

社会的企業が増加している

社会的企業は高い事業性を兼ね備え社会的インパクトを追求する組織のことですが、ほとんどの場合資産の分配を部分的に認めています。これによりベンチャーフィランソロピー組織は社会的企業を支援しやすくなることが考えられます。なぜなら、部分的に資産を分配できるということは経済的なリターンを少なからず受け取ることが可能だからです。財務的にうまく回るようになれば、組織の維持も比較的容易になります。

このようなプレイヤーが増えていけば、つられてベンチャーフィランソロピー組織も増えていく可能性があります。

社会的投資が広がりを見せている

ベンチャーフィランソロピーに限らず、社会的投資やソーシャルファイナンスが広がっていくことで、そこに参加する組織や個人も多くなっていくでしょう。このときにこれまでベンチャーフィランソロピー組織が蓄積してきた経験や知見を他のタイプの社会的投資家やソーシャルファイナンスの主体と共有することで大きな存在感を持つようになるでしょう。

批判もある

とはいえ、批判の声も続々とあがっています。資金提供と運営支援を長期的な視点でアクティブに実施するというスタンスは画期的である一方で、これまでの伝統的なフィランソロピーとのギャップが目立ってしまいます。ここでは主要なものを3点挙げてみます。

フィランソロピーには適さない

とても基本的なお話しのようにも聞こえますが一考に値するでしょう。

そもそもソーシャルファイナンスが対象としている組織や事業は、普通のビジネスとはロジックが異なります。そこに一般的なビジネスに適しているベンチャーキャピタルのロジックをフィランソロピーとして適応することに無理があるという主張です。

しかし、こればかりは、世界中での実践の蓄積を待つほかないでしょう。それでしか、効果的であるか否かの検証はできないと思います。

コレクティブではない

今社会に残されている問題は複雑(コンプレックス)な問題がほとんどです。そして、複雑な問題というのは往々にして単体の努力では解決が難しく、より多くの主体が協力・連携してやっていくことが必要になります。

しかし、ベンチャーフィランソロピーの議論は、支援対象がほぼ組織単体であり、支援先の組織がいかに成長するかに焦点が当たっています。これでは複雑な課題の解決に向けた努力と逆行しているではないかという主張です。

金銭的なリターンを「非営利」組織に求めることは酷である

非営利という仕組みはそもそも金銭的なリターンを想定していません。社会的企業もすでに述べた通り、少なからず金銭的なリターンを発生させることもありますが、上限が決まっています。そもそも低収益事業だからこそ非営利という仕組みを採用しているのであって、金銭的なリターンを期待することはそぐわないという主張です。

また、金銭的なリターンを求める考え方が格差や貧困を生んだのだという考え方もあり、同じことをして二の舞になるのではないかという主張もあります。

まとめ

今回はベンチャーフィランソロピーについて解説してきました。
パワフルなコンセプトではある一方で、その分色々と考えなくてはいけないところもありますね。

また、資金提供のツールの開発や、助言能力自体の強化の必要性もあり、今後の発展に期待が寄せられています。

より詳しい内容について知りたい方は、別記事「ベンチャーフィランソロピーの4つの論点」をご覧ください。