社会的証券取引(Social Stock Exchange)とは何か?

2017-01-04

社会的証券取引(Social Stock Exchange)という新しいタイプの取り組みが世界中で生まれ始めています。これは、社会的な組織に関連する証券(株式や債券など)に特化した取引やプラットフォームのことです。今回は、この特徴や期待、課題について解説していきます。

社会的証券取引とは?

そもそも、証券取引って?

証券とは、財産に関連する権利や義務が書かれた正式な文書のことを言います。文書とありますが、最近では電子化されていてやり取りがとても簡単になっています。具体的には、株式や債券などがあげられるでしょう。このような証券を取引することを証券取引と言います。

これらの証券を取引しようとした場合、何もない状態では希望する証券を持っている取引相手を見つけるのにとんでもなく苦労するでしょう。そこで、取引希望者が同じ場所に集えば簡単に取引を行うことができます。このようなプラットフォームのことを証券取引所と言います。

概要

一般的な企業などにおける証券取引所と同じように、社会的企業や慈善団体などのようなソーシャルセクターに関わる証券に特化した取引やそれを行うプラットフォームを指します。

ソーシャルセクターとは何だろうか?」でも解説していますが、その特徴として「非営利性」があげられます。非営利とは、組織内部の財産を外部の人に分配しないという原則のことです。これは言い換えれば株式を発行しないということを指しています。なので、証券取引のコンセプトとは相性が悪いと思われがちですが、このことについては2点言うことができます。

1点目は、ソーシャルセクターにおける社会的企業は制限付きで株式の発行や配当を出すことが認められていることが多いことです。このようなタイプの証券を扱う場合、一般的な企業の株式を扱っている取引所では困難だと考えられるので、特化したプラットフォームが必要であるといえます。

2点目は、仮に慈善団体だとしても、債券の発行は可能だということです。例えば、日本におけるNPO法人のような組織も、一般的な株式会社の社債のように債券を発行することが可能です。これは、一般社団法人やその他の非営利組織においても同じです。このような債券を取引するためのプラットフォームも特化したものが必要でしょう。

寄せられている期待

では、社会的証券取引にはどのような期待が寄せられているのでしょうか?このことについては、当事者であるソーシャルセクター、投資家、受益者の3者の視点から捉えることができます。

資金調達の活性化

ソーシャルセクターにとって事業を継続していくためには、資金調達が必須です。この時資金調達の手段として、株式や債券などを発行することも可能です。証券を発行しても、その取引自体にコストがかかっていてはコスパが悪いですが、取引所によって簡単になればこの方法も活性化します。

このことで、これまで通りの寄付や会費、補助金、助成金、自主事業収入、委託収入などのようなファンドレイジングの方法に新たに手法が増えることになります。それぞれの組織にとって最もいい組み合わせを改めて考えることで、より事業も活性化するのではないでしょうか。

資金提供者の増加

投資家の視点からも、取引所が整うことは重要な意味を持ちます。投資家は自分の希望する証券を見つけたり、取引相手を見つけたりして最終的に利益を得ます。これらに対する手間を省けるプラットフォームがあれば、より簡単に取引ができます。

簡単に取引ができることは、新しい投資家の参入も促すことができます。結果として資金提供者としての投資家が増え、有力なソーシャルセクターの資金調達にも良い影響を与えることができるでしょう。

ソーシャルイノベーションの加速

資金提供者の増加やファンドレイジングの活性化によって、それぞれの組織が提供している社会サービスも成長していくでしょう。既存のサービスの改善、新しい事業の開発、他の事業との連携などを通して結果として受益者の生活をより向上していくこととなります。このようにソーシャルイノベーションが加速していくことが期待できます。

また、同じプラットフォーム上で取引が行われるので、より成果をあげることができる組織や事業へ資金が集中的に流れていくことも期待でき、このこともソーシャルイノベーションの加速に繋がります。

社会的証券取引の課題

様々な期待が寄せられているとはいえ、どのような課題や難しさがあるのでしょうか?主なものとして、以下の3つが挙げられます。

成果評価を共有する難しさ

社会的証券取引の大きな特徴として、金銭的なパフォーマンスだけでなく、むしろ社会的な成果に注目されているという点が挙げられます。これは社会的インパクトと言われ、「社会的インパクト評価とは」でも詳しく解説しています。

社会的インパクトを評価する時に難しいのは、地域や時代、受益者、制度などの影響によって比較することが難しいということです。例えば、広島における教育格差へ取り組んでいる事業とタイにおける就労支援をしている事業の社会的インパクトを横に並べて比べることは基本的に難しいです。分野を絞ってしまえば、ある程度クリアできますが、それでは次に取り上げているボリュームの面で厳しくなってしまいます。

この難点を克服しようとするコンセプトとして共有評価があります。これは、社会的インパクト評価を複数の組織間で共有しようとするもので、「Shared Measurement/共有評価がインパクトを加速させる」でも詳しく解説しています。同じプロセスや指標で社会的インパクトを評価することで、同じプラットフォームに乗せることが可能になります。

ボリュームの確保

プラットフォームが成り立つためには、一定程度の参加者がいなければいけません。ここで紹介しているようなタイプの金融に関して関心をもち、実際にお金を投じたり、証券を発行したりといったことをするプレイヤーがいなければそもそも成り立ちません。

現段階で、十分なプレイヤーがいるとは言い難い状況です。まだまだこの領域は黎明期なので仕方ないですが、色々な方面へのPRやマーケティングが必要になってくるでしょう。特に、ソーシャルセクターへの周知と能力強化、投資家への魅力向上と意識喚起については必須だと思われます。

法的インフラの整備

すでに紹介している通り、証券とは財産に関わる義務や権利を表しているものです。つまるところ法的な効力を持っていることになります。お金に関わることでもあるので、証券を流通させるためのプラットフォームに関しては適切な規制が必要になります。

さらに厄介なのは、社会的企業が株式を発行したり、社会的インパクト評価を行ったりといった部分はこれまで通りの制度ではカバーしきれない部分でもあるということです。証券取引以外の部分ともリンクした形で、法的インフラを整えなければいけないという点では、比較的ハードルが高いともいえます。

まとめ

今回は、社会的証券取引とは何かについて解説しました。まだまだ日本では馴染みの薄いものではありますが、今後日本でも話題になっていくものと思います。待ち受ける壁は数多く、高いものではありますが、クリアできればとてもインパクトのある取り組みになることは間違いないでしょう。