企業の社会貢献を取り巻く3つのスタンス

企業の社会貢献に対するスタンスにはいくつかバリエーションがあります。例えば、企業の社会貢献として倫理や自制心を重視する考え方もあれば、しっかり稼いで納税したり株主に還元したりするのが大切だという考え方もあります。世の中の議論を見ていると、このスタンスの違いをごちゃまぜにしているものをよく見かけます。今回は、企業の社会貢献にまつわる3つのスタンスについて解説します。

企業の社会貢献に関する3つのスタンス

企業の社会貢献に関する考え方には大きく3つの考え方(スタンス)があります。企業が社会に対してどのような責任を持っているのか、社会全体の中でどんな役割を担っているのかには様々な議論がされています。

企業は倫理的な存在であるべきだというスタンス

このスタンスは、企業活動やステーホルダー(利害関係者)への倫理的な関心を示す立場をとります。例えば、「ステークホルダーや社会へ積極的に貢献すべきである」や、「例え稼げるビジネスだとしてもモラル的に正しくない場合は、事業を行わないという選択をすべきだ」などの考え方をします。

この考え方では、強い自制心や社会に積極的に貢献すべきであるという利他主義が重要視されます。社会への貢献の成果を重視するコンセプトとして企業の社会的業績の測定(CSP)と呼ばれるものもあります。CSPは企業が社会にどの程度のパフォーマンスを示せたかという点を評価するものです。これは社会的インパクト評価に通ずるものがあります。

企業は経済的な存在であるべきだというスタンス

株主や投資家の財産の権利を第一に関心に据える立場です。わざわざコストをかけてボランタリーに行動をすることをよしとしません。むしろ、株主や投資家の財産を守るために本来の事業を行うことを企業には期待されています。

では、社会への関わりについてはどのように考えられているのでしょうか?
株主(shareholders)へはしっかりと稼いだ分から分配することで豊かになってもらおうとします。事業活動以外の部分に関しては、納税したものを原資にして国が政策によってカバーしてもらおうというとします。また基本的に、政府の介入は最小限にすべきとされています。

企業市民として振る舞うべきだというスタンス

企業市民という考え方は、比較的新しい考え方です。近年のグローバル化に伴って、企業活動も国境を越えて行われるようになりました。国が変われば法律が変わるので、特定の法律に従うという姿勢だけでは不十分になってきました。そのため、企業は企業で守るべきルールを持つべきという考え方が必要になってきました。

そもそも「市民」という考え方は、個人に対して使われていました。ざっくり解説すると、個人は、社会によって守られる権利がありその社会を維持する責任がある、そんな存在であるというものです。この考え方を企業にも応用させたものです。企業が事業活動を実施できるのは、健全な社会があってこそなので、社会を健全に保つことは企業の責任であるという主張です。この考え方は上記の2つの考え方とも重なる考え方として、支持する人が増えています。

企業の社会貢献に関する共通する考え方

どの考え方もそれぞれ着眼点が違うので、全く違う考え方のように見えますが、共通する視点もいくつかあります。まず、企業は福祉の増進に貢献するものだという考え方です。既に紹介した3つのどの考え方も企業が重要な存在であり、諸悪の根源であるというようには語られていません。違うのは、福祉を高めるためにどのような役割を演じるかという手段の部分と言えます。

また、法令遵守の考え方を尊重していることも共通しています。法律はその時代の世論も含めその社会の規範や規律を明文化したものです。これに従うというのは最低限企業として必要な姿勢であると言えるのです。ただ、すでに見た通り法令をただ守ればいいのかという点については少しずつスタンスが違います。

企業のあり方そのものが問われ始めている

企業は現在の社会に欠かせないものになってきました。まともな社会の運営は企業抜きには語れません。しかし、企業活動がマイナスの影響を与えることも残念ながらあります。最近では、長時間労働や過労死などが日本でも問題になり始め、働き方改革が進められ始めています。環境問題もますます進展していて、対策が求められています。続々と開発される新しいテクノロジーは、今後人類にどのような影響を与えるのか分からないところも多いです。

ここで紹介した考え方のどれが正解かどうかは誰にもわかりません。しかし、現在進行形で社会の構造が変わっている中で、企業のあり方も変わっていく必要があることは事実でしょう。企業の持つ爆発的な成長力と創造性を、社会や人類の発展にどう活かしていくのかが何よりも重要です。

まとめ

今回は、少し概念的な内容が多かったですが、企業の社会貢献に関わる考え方を紹介しました。共通していたり、対立していたりする3つの考え方ですが、いづれにしても企業が今後どのような存在になっていくべきなのかをみんなで考えていく必要はありそうですね。

参考文献

[1]Windsor,D.(2006)Corporate social responsibility: three key approach. Journal of Management Studies, 43(1), pp.93-114.